草刈は奥へ入り込んで行き そのまま戻って来なかった。
テーブルを囲んで賑やかに膳に向っていた家族が ひとり
立ち ふたり立って いつしか誰もいなくなってしまった。
そのうち小夜子は 自分の入ってきた玄関の方から ひそ
ひそ と話し声がするのに気づいた。
やがて それは何人かが集まって はばかりもなく罵って
いる声に変わった。
「でてこい! こらッ 小夜子!」
突然 何人かの男の叫び声が 自分に向かって発せられた。
小夜子は ハッとした。
草刈が家を抜け出して こっそりと 近所の男たちを集め
たらしいのに気づいたのだ。
小夜子の胸に こみ上