「適齢期はあるか?」という漠然とした質問に対しては、「ない」だと思います。
ひとつ、言っておきたいことがあります。
今の時代、男性にとっても女性にとっても、結婚することや子どもを産むこと、家庭を持つことというのは、「ゴール」でもなければ「安定」でもない、まして「結婚だけが幸せへの道」でもないということです。
昔の価値観では、良い人と結婚しさえすれば、そこから死ぬまで幸福が約束されるものだったと思います。
収入の安定、介護の安心、イエを継ぐ人がいるということ、そしてもちろん一人ではないということ…そうしたものが、すべて「結婚」と「子ども」によって保障されたわけです。
しかし、現在ではそうもいきません。
よい会社に勤めている人、給料の良い人を選んだからといって、老後までそれが続く可能性は低くなっています。リストラの可能性だってありますし、定年後の人生が長くなっていますからね。
そして定年後の長い人生、介護が必要な時間もより長くなっています。共働き時代にあって、配偶者や子どもがいるから介護は大丈夫とは、決して言えないのです。特に女性は、配偶者が亡くなってからの時間も長く、結婚したから一生寂しくないというのも、嘘です。
まして、今やイエという概念は絶滅危惧でしょう。
こうやって考えていくと、そもそも「結婚するべき」「家庭を持つべき」という考え方自体に、何の根拠もないということになってきます。
自立=家庭を持つことというのも、とっくの昔に成立しない考えです。
家庭などなくても、経済的にも精神的にも自立していることこそ、自立なのです。むしろ、ひとりでも生きていける能力があることが、自立なのです。そこをはき違えていたのでは、いくらお子さんに言ったところで、まったく響かないでしょう。
つまり、お子さんが結婚したいと思ったときがいわば適齢期であり、一生したくないと思えばそれでも構わない、その選択は本人以外の誰にも邪魔されることがあってはならない、それが現代における結婚です。
もちろん、親が結婚してほしいと思うなら、そのように希望を伝えることは間違いではありません。
もしお子さんが子どもを望むなら、安全な出産ができる年齢のうちに結婚するべきなのも、言うまでもないことです。
結婚したいのにできないのなら、何らかの手段を取れるように援助するのも良いでしょう。
でも最終的な決定はお子さんがするべきですし、その選択について「適齢期」という、今や何の意味も持たない言葉をタテにして迫るのは間違いです。
娘さんは自立していらっしゃるのですから、それで良いではありませんか。家庭を持たなくても、幸せになれる時代なのです。
息子さんも、別に結婚する必要はないと思います。自立することと結婚は、まったく無関係なのですから。ただ、自立は親が促さなければならないこともあるでしょう。「家事を協力」などと生ぬるいことを仰らず、家から叩き出してでも自立させなければならないのではありませんか。
どちらにせよ、結婚して自立するのではなく、自立した大人が結婚する時代です。自立していない男性に、待っているだけではイマドキ誰もお嫁になど来ないと思いますよ。