「ショートストーリー」の日記一覧

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キューポラの街の少女

一部の方はご存知だが私は今がんの闘病中である。 ところが同時並行的に心臓の問題も悪化して、急に一昨日からペースメーカーの装着のための入院することになった。 いざ病室に入ってみると意外に時間があるので、気晴らしも含めてショートストーリー・ドキュメンタリー・思い出話みたいなのを書いてみることにした。 以下お読み頂いて、感想を聞かせて頂ければ幸いである。      キューポラの街の少女  映画…

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契約

糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう濃いようにも見えた。 「何だか不気味な夜だな」 いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。 霊感があるとか、第六感が働くとかそんなことは今までも一度も無かった。 周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。 にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。 いつも近道にしている薄暗い公園の散…

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メリークリスマス!

と、いうことで 恒例のクリスマスショートストーリーを 今年も私のホームページ 『夢の樹舎』 に、掲載をしました。 ☆夢の樹舎→短編小説→X'mas storyへとクリック。 ☆ホームページアドレスはプロフィールを参照下さい。 皆さんにとって 素敵なクリスマスになりますように。。。

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クリスマスストーリー掲載のお知らせ

今年もホームページ『夢の樹舎』に クリスマスストーリー(ショートストーリー)を掲載しました。 夢の樹舎のアドレス http://yumenokisya.web.fc2.com/    短編小説      ↓    X'mas stories 今年のタイトルは 「クリスマスなんて大っ嫌い!」です。

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Dear My Christmas ~クリスマスストーリー~(前編)

「クリスマスが嫌いな子供なんているのかな?」 街路樹を飾る色とりどりのイルミネーション。 ショーウインドウに飾られたクリスマスカラーのオブジェ。 街を流れるクリスマスソング。 もし自分が独りぼっちだとしたら街行く誰もが自分より幸せに見える季節。 もし自分の今が幸せだったら街行く誰よりも幸せを感じられる季節。 それがクリスマスだ。 「いるわけないか。  だよなぁ~ 俺なんかも楽しみだったもの。…

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迷い星 8  〜七夕ストーリー〜

「おーい! 早く読み上げてくれよー!」 観客からも歓声が飛んだ。 最早、泣きそうな感じで晃が祈る。 有希も両手を合わせて強く目を閉じていた。 覚悟を決めたかのようにミス七夕はついに名前を読み上げた。 「特賞は・・・山崎和也さんです! おめでとうございます!」 DJ氏が当選した抽選券を受け取って会場に呼びかけた。 「山崎和也さん!  いらっしゃいますか?  この場にいなかったら無効です…

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迷い星 5  〜七夕ストーリー〜

キッカケはともかく。 その件があったお陰で俺達も自然に付き合うようになっていった。 幸せな時間だった。 愛し合うという事は決して時間の長さではなくて その期間にどれだけお互いの想いを尽くせるのか? その深さなのだと実感できた日々だった。 それから夏が来て秋になり年が明けて やがて冬が盛りを過ぎた頃、ようやく俺の就職が決まった。 「ホント!? 良かったね。うん、良かった!」 祐二さん…

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迷い星 4  〜七夕ストーリー〜

ところが実はこれは晃と有希が考えた計略だったのだ。 もちろん、これは後で解った事ではあるんだけど その時には二人はもう既に付き合っていて なんと晃と有希は俺と美奈子を近づけようとしていたのだ。 それを知らない俺はその夜、晃に電話をした。 『おぉ、どうした?』 考えあぐねた末に出した結論。 それは単刀直入だった。 なんとも我ながら情けない結論だと思った。 だが、下手な小細工はむしろ上手くい…

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迷い星 3  〜七夕ストーリー〜

「なぁ、どうせ毎日朝から晩まで就活をしてる訳じゃないんだろ?  きっと気分転換にもなると思うし、何より人助けだと思ってさ。  週に二〜三日で良いから、ちょっと手伝ってくれないか?」 もう三十一、二年前の事だ。 卒業前に就職が決まらなかった俺は 地元に戻って一年間就職浪人をしていた時に 晃の誘いでとあるボランティアの手伝いをする事になった。 そんな或る日、その日の仕事が終わって帰ろうとしてい…

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迷い星 2  〜 七夕ストーリー 〜

「でもホント、不思議よね。うちの人と違って優しいしハンサムなのに」 晃の顔を見ながら有希が言った。 「おいおい、それはどういう意味だよ?」 「そういう意味よ」 「意味が解んないんだけど」 晃が口を尖らせた。 「いやぁーねぇー 自分を知らないって怖いわぁ」 「すまんね。それが解ってりゃお前とは結婚してないよ」 「あら、ねぇ? 聞きましたぁ、奥様?  どの口が言ってるのかしらねぇ−?…

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迷い星 1  〜 七夕ストーリー 〜

勤続三十年という事で 会社から一週間のリフレッシュ休暇をもらった事もあり 野暮用ついでに俺は久しぶりに故郷に戻った。 十年前に父親を、そして三年前には母親を亡くして もう戻る事もないと思っていた故郷だったが 実家の土地を買いたいという人がいるという連絡が 仲介を頼んでいた不動産屋から入ったので その手続き等もあったし 何より、お盆を二ヶ月後に控えて久しぶりの墓参りもしたいと思っていたのだ。 …

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メリークリスマス  (10)

「お待たせしました。あらっ、パパも到着ね?  はい、お父さんですよー」 恰幅の良い、いかにも人の良さそうな看護師が そう言うと、赤ちゃんを司の元に連れて来た。 看護師に抱っこされたままスヤスヤ眠っている娘を 初めて見た時、司は頷いた。 「うん、良い寝顔だね。この子は幸せになるよ。  だって、みんなから素敵な縁をたくさんもらった縁が産んだ子だもの」 「そうだね」 縁も頷いた。 「よし、…

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メリークリスマス  (8)

死神83号は静かに言った。 だが、それでも東海林司は諦めきれなかった。 「なぁ?」 田村みゆきを抱きしめながら振り向くと死神83号に言った。 「俺は又、生まれ変われるのか?  なら、俺は生まれ変われなくても良い。  地獄に落ちても良い。虫けらに生まれ変わっても良い。  いや、一生浮かばれないで彷徨ったって良い。  だから、みゆきちゃんを元の両親の元に生まれ変わらせてくれないか?  もちろん…

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メリークリスマス  (7)

ひとつ深呼吸をすると死神752号は東海林司に向かって笑顔を作って言った。 「田村みゆきちゃんのご両親なら大丈夫です。  多少、時間は必要ですけどね。  それで又、お子さんが産まれる事になっています」 「そしたらママもパパも私の事を忘れちゃうの?」 田村みゆきは初めて感情をむき出しにして叫んだ。 <ママとパパがみゆきの事を忘れる> それは望んでいた事であり、望んでいなかった事でもあった。 …

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メリークリスマス  (6)

「そっか・・・こんなにちっちゃいのに。  可哀想にな・・・」 「別に・・・」 田村みゆきは街の遠くを眺めながらそっけなく答えた。 「なぁ?」 東海林司は死神83号を見ると言った。 「八ちゃん、もうひとつだけおせっかいがしたいんだけど」 「ダメですよ! これ以上規則は破れません!」 用件を察知してか死神83号はすかさず言った。 「いや、そんな難しい事じゃないんだ。  みゆきちゃんは…

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メリークリスマス  (2)

男は車が途切れるのを待って車道を向こう側へと小走りに駆けた。 そして、女の子の前に立つと優しく声を掛けた。 「可愛いサンタさん、いったいどうしたんだい?  トナカイさんとはぐれたのかい?」 女の子は男を一瞥すると又、俯いてしまった。 困った男は女の子の隣に同じように並んでしゃがみ込んだ。 それでなくてもクリスマスイヴの夜だ。 ケーキ屋のショーケースの前に 大の大人と小さな女の子が並んでし…

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三年  その4

「でも、それならそれで教えて欲しかったな。  せめて葬儀には出たかった・・・」 「留美ちゃんがね。言わないでくれって。」 「えっ? どうして?」 「真ちゃんが転勤をしてやっと一年経ったかどうかって時だったから  きっと、気を遣ったんじゃない?」 「そんな・・・」 「そうだ! 忘れるとこだった。ちょっと待ってて。」 そう言うとマスターは奥の控室に引っ込んだがすぐに又、戻って来た。 その…

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三年  その2

そして、マスターの他には女の子が一人。 常連客の下世話な下ネタにも明るく冗談で返すような快活で朗らかな女の子で <飲み屋の女の子>と言えば偏見になるかもしれないけど、それを恐れずに言うなら およそ女を売り物にしていない、むしろ女にしておくのがもったいないくらいサバサバとしていて 良く笑うその表情は屈託がなくて常連客の誰からも間違いなく愛されていた。 「留美ちゃんってさ。  こんな<道端>に咲…

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三年  その1

その夜、俺は三年ぶりに古ぼけたビルの懐かしい階段を地下へと急いでいた。 この街に住んでいた時は二晩と空けずに通い詰めていた店『Bar ROADSIDE』だ。 マスターはおそらくは五十代前半くらいだろうか。 無精髭がそうとは見えないくらい渋い、いわゆるチョイ悪オヤジという言葉がピッタリな感じで 黙っていればかなりなイケメンなのだが、<相好を崩す>という言葉があるけど まさにそんな風で、一言話を始…