記憶とは、儚くも美しい 幼い頃の思い出に、映画の一シーンがある。 二両の車両ごしに、懸命に手話で会話する男女。 必死で伝えようと懸命だが、思うようにいかない。 夫婦間の想いが綴られる中、思わず涙がこぼれてくる。 命と命との静寂の中、ろう者同士の思いが、 人として相通じて悲しい。 子どもごころにも、いつまでも残っている。 高峰秀子さん、小林桂樹さんの共演。 戦後間もない、まだあちこちに…
私が敬愛するイラストレーター和田誠さんの著書『お楽しみはこれからだ』は、映画の印象的なセリフと場面をイラスト化して紹介する映画ファン必携の書。セリフが魅力的な映画ならいくつか覚えがあるのと、趣味人倶楽部運営からお題が出されていたので、和田さんにあやかって書いてみようかなという気になりました。 映画はジョン・トラボルタの主演作『フェノミナン』。 アメリカの田舎町で暮らすジョージが37歳の誕生日…
それはマーヴィン・ルロイ監督が1942年に制作した「心の旅路」です。 ベン・ハーのような大スペクタルではなく、地道な恋愛映画です。 主人公チャールズ・レニアをロナルド・コールマンが演じています。あのコールマン髭の俳優です。 女主人公のポーラ・リッジウェイーは、グリア・ガースンが演じています。 第一次世界大戦の戦場で記憶を失くした男が精神病院から逃げ出し、戦勝に沸く市内でポーラーに救われます。…
『地球爆破作戦』 は、日本語のタイトルからは想像できませんが、1970年公開のSF映画でデニス・ジョーンズの小説を原作とし冷戦下のアメリカとソ連を舞台として、AIによる人類の支配と人類の戦いを描いています。 当時のコンピュータ技術は世界最大のコンピュータでもプログラマ電卓ほどの能力しかありませんでしたし、通信技術においては黎明期でしたし、ましてやAIなんて想像していたかどうかを考えるとデニス・ジ…
邦題は「正義のゆくえ」、原題は「CROSSINNG OVER」ハリソンフォード主演の映画だ。 日本に住んでいると移民問題は意識しない、皆無に等しいであろう。新聞などでたまに取り上げられるが、遠い国の出来事、問題というレベルでしか認識されていないであろう。自分もそうであった。 不法滞在者を検挙する捜査官ハリソン演じるマックスが、それぞれの理由でアメリカへ移民してきた人々の問題にフォーカスして描か…
『逃がした魚は大きい』という例えがありますが、この映画、本当に、「ビッグフィッシュ」な結末です。 誰でも、人生、いろいろなことがあります。それを息子に語るとき、誇張する場合もあるかもしれませんね。 いまふうに言えば、「盛る」ということでしょうか。 でも、この映画、画面いっぱいの水仙を用意して求婚するシーンや、ラストにはこころ暖まるものがありました。 これまで、長く、人生を歩き続けてきた、…
二宮和也さんと北川景子さん主演の映画「ラーゲリより愛を込めて」を一昨年観たが、今でも私の心に強く残っている。 それは、奇しくも映画の舞台となったシベリアのラーゲリの1つに、私の父も同じ頃に抑留されていたからだ。 ラーゲリとは、旧ソ連の強制収容所のこと。 父は太平洋戦争の終わり頃、学徒動員で徴兵され旧満州(現中国東北地方)に出兵した。 しかし、1945年8月の敗戦後に旧ソ連軍の捕虜となり…