お稲荷さん

夕暮れ時に母に頼まれ隣村まで油揚を買いに行った
その帰り道、確り油揚を手に持ち急ぎ足で歩いてた

後ろから誰かがスタスタと追いかけてくる老婆がいた
けれど気もせず歩いていた

後人が肩と肩が触れ合うほど近くに追いついて来る
と感じるもなくあっという間に通り過ぎてゆく

「今晩わ」と言葉を交わした時の老婆の顔はのっぺらぼう、
もう10歩も20歩も先に逃げるように走り去って行く、
ギャーと驚いて慌てて家に入った

荒い息をして家について母に「はい、油揚げ」と渡した

が「えっ、袋の中は空っぽよ」と言う
何度確かめて油揚げはない、もしかしてあの足の速い老婆が盗