柳の精

或る村に古くて小さい、今にでも崩れ落ちそうな
神社が野原の真ん中にぽつんと建っている

神社の周囲は古い木々で囲まれていた
然れど、神社の北側の庭にある柳の木だけは
切ってはいけないとされていた

其の訳は誰も言わないし知る人も居ない
若連中は少し剪定しないとお化けのようだ、
と言って木の枝を切りだした

その年は大洪水で田や畑は沈没し
家・屋敷も半壊し死人も出た

神社の古木は倒れ腐ってしまった
お化けのような柳の木だけは青々と生きている
村人は「何で柳の木だけは活気が良いのだろう」
と呟いていた

古老が渋々と口を開いた
「なあ、あの柳の木はこの神社