日本人女性の血と涙の滲んだ世界

1990年頃書いた私自身の文から抜粋した一部分です。短文ですが恐らく日本人町について書かれた最後のものと考えてております。この文が消えたら恐らくすべてが消え果る、と思われる『唐行きさん物語』です。

 シンガポールには、嘗て日本の各地にあった青線や赤線のような地域がある。日本では確か一九五八年頃、廃止になった赤線地帯である。私が経験したことのない世界である。しかし、今や「ジャパ行さん」という言葉が巷間に囁かれている。シンガポールのことをとやかく言っては可笑しいのかも知れない。

 私の家の窓から古い街並みが壊されつつあるのが見える。近い将来、近代的な街に