雪明かりの押しくら饅頭

高校入試から一ヶ月と少し遡った一月末だった。入試直前の多感な少年時代を想い出しつつタイプしている。

 母に命ぜられ、大崎の親戚まで旧正月用の餅を受け取りに向かったのは、一月も末のよく晴れた日の朝だった。餅搗きこそお願いしてあったが雑煮用に切る作業が控えていた。柔かくも無く固くもない適切な時間は限られている。
 朝と言ってもお昼に近い頃だったように思う。中学三年生だった私は高校受験を控えていたが、母はなんの苦もなく命じている。そして命じられた息子の私もなんの苦もなく引き受けていた。高校受験に失敗する筈が無いと多寡を括っていたことも確かだった。

 この年