物言えぬ患者

甥(神奈川県警)が、入院している友人を見舞いに行った。甥がベッドの横に立って見ていると、その短い間にも友人の容態はどんどん悪くなっていくのが見て取れた。口もきけない友人は手をばたつかせ、甥に何かを求めていた。甥が感づいて紙と鉛筆を渡した。友人はそれに殴り書きをして甥に渡すと、苦しそうにしながら事切れてしまった。友人の死を目撃した甥は渡されたメモを読む気にもなれず、ポケットに放り込んだ。後日、葬儀の場でそのメモを思い出し、遺族の前で文面を読むことに。甥は友人の最後の言葉をゆっくりと読み上げた。
「おまえはおれの酸素の管を踏んづけている!」