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よくあるご質問

おくの細道奥州編のスタート

はじめに
 『奥の細道』に関する著書、解説本は、枚挙にいとまがない。
周知の通り、山本六丁子氏によって、昭和十八年『曾良 奥の細道随行日記付元禄四年日記』(以下、「曾良日記」)が翻刻された。

この事によって一躍学界の注目を浴び、『奥の細道』が必ずしも旅の事実をそのまま伝えたものではなく、文芸的誇張表現を駆使した作品で、俳諧紀行文の最高傑作の評価をさらに高くした。なかでもこの紀行文・『奥の細道』が旅の事実と似ているかどうかは、作品本来の芸術的文学の高さとは関係なく、作者・松尾芭蕉翁が詩的幻想の世界を構成した発想の探求や芸術的世界の高さの解明に役立ったことで、書名『奥の細道』は、『おくのほそ道』と書名が変化して知られるようになったのである。

 さらには、平成八年芭蕉翁の自筆草稿である『おくの細道』が世に紹介された。次いで翌年には桜井武次郎・上野洋三氏が解説本として、岩波書店から影印本を刊行された。
驚くことに、この紀行文には七十四箇所に及ぶ訂正の跡を留めていたのである。そして平成十五年、尾形 仂氏によって『日本古典評釈全注釈叢書』のなかに、『おくのほそ道評釈』が刊行された。近年まだ耳新しいこの古典創作の秘密を明らかにした解説本によって、『奥の細道』の魅力に筆者は取り付かれてしまったのである。

 この事が、国文学者でない素人の筆者にとって、本書執筆のきっかけとなった。勿論、松島に生まれ松島で育ち、ボランティア・ガイドを努めてきた筆者だからこそ、日本を代表する古典文学『奥の細道』が、日本を代表する名所松島を「扶桑第一の好風」と評価した記述に誇りを持っている。松島にとどまらず、往時の仙台領内には、「宮城野」をはじめ伝統的歌枕も多く、この作品が奥州名所の評価をさらに高くした功績はあまりにも大きい。先学諸氏の貴い郷土資料も埋もれ、国文学者にも一般的には知られていない点は見逃せない。古典文学にありがちな難解な解説本と異なり、芭蕉翁の求めた芸術的文学の高さを地域住民とともに味わうガイドブックのほうが、むしろ現地を訪ねる旅人にとっても、作品鑑賞の近道になると考えている。それだけに、往時を偲び、芭蕉翁の旅情を理解出来そうな郷土資料や写真を加えて、わかり易い調査報告書としてペンを執った次第である。

 既存の解説本『おくのほそ道』とは異なった視点なので、あえて自筆本の内題に記された「おくの細道」が定着する未来を期待して、本書は書名『おくの細道』(以下、『細道』)を表記した拙文であることを最初にお許し願いたい。

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