〝ファスベンダーの『コシ・ファン・トゥッテ』〟

 ファスベンダーの一番の代表的レコードは、カール・ベーム指揮のモーツァルト『コシ・ファン・トゥッテ』である。ザルツブルク音楽祭で、1974年8月28日、指揮者ベームの80歳の誕生日に行われた上演の実況録音盤。

 この『コシ・ファン ....』は、音楽祭でも毎年の呼びものとなっていた上演で、演出、指揮、そしてオーケストラや歌手の演奏すべてが、最高の水準と折り紙付きだった。その様子がこのレコードにははっきりと刻み込まれている。ファスベンダーのドラベラは、彼女のベストの一つ。フィオルディリージを歌うヤノヴィッツの声の対比もくっきりとしており、重唱における彼女