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よくあるご質問

★どなたかトイレに連れて行ってくださ〜い★

義母は日中はリハビリする時以外は病院の食堂で過ごす。
 その食堂を見渡すようにスタッフがデスク、パソコンなどで事務的なことをやっている。間仕切りはなく解放感がある。

 96歳、93歳、そして92歳の義母の高齢者3人娘が常にスタッフの目の届くところにいるのだ。そこに4,5日前から、おひとりが加わった。
品のいいご婦人という感じ。言葉もはっきりとしておられ義母よりずっと若く見える。

 「さっきからお願しているのにどうして連れて行って下さらないの?」と叫んでいる。スタッフは誰一人として、それに応えない。
完全無視を決め込む。益々、彼女の訴えの声は食堂に響き渡る。

 「もう少し膀胱に貯めてからに行きましょうよ」とスタッフが見かねてやって来た。

 「5分前に行って少ししか出なかったでしょ」
 「私、医者から我慢してはいけないと言われておりますの」

 それでも彼女は負けずに叫び続ける。

 「どなたかトイレに連れて行って下さ〜い!」
 「はい、わかりました。じゃ いきましょう」とスタッフの苛立ちが私にも感じられた。

 トイレを済ませテーブルに連れてこられた彼女は一応は満足したような表情を見せている。

 スタッフが小さなホワイトボードを持ってきた。
 
 「ここに今の時間を書いて下さい。【4時5分】って」
 「私が書くんですか?」
 「ご自分で書いた方がいいでしょう」
 「わたくし 手が震えて書けませんのよ」と言いながら
 ゆっくりとマジックペンで【4時5分】と小さな文字を書いた。
とても美しい文字だった。

 彼女は私に向かって話し出した。
 「ママが死んでしまいましてね。だからパパは可哀そうなんです。
息子(彼女の孫)の世話もしなくてはいけないから。私がここにいるから安心しているんです。こんなに辛い思いをしているのも知らないで・・」

 ママとはお嫁さんのことでパパとは息子さんのようだ。
お嫁さんが亡くなって息子さんはご苦労されていることがわかった。
私が隣に座っている義母の嫁だと分かっているらしく
「いいわね。私なんか誰も来ないもの」と義母に向かって言っている。
義母はただ微笑みがえしするだけで言葉は発しない。

 「トイレに連れて行って〜全く誰もきいちゃくれないのね」
とまた叫び出した。ホワイトボードの時間からまだ5分と経っていない。

 義母も入院したばかりの時は不安からかトイレばかり行きたがり同じようだった。彼女も環境の変化についていけないのだろう。彼女が可哀そうに思えてくる。彼女の寂しい心持がよくわかる。

http://www.youtube.com/watch?v=PMHRe1PFTus
【竹内まりや ♪カムフラージュ♪】

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