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よくあるご質問

合唱団の演奏会を前に

合唱団の若いソプラノの会報係から原稿の依頼があり、断われずに下記のような(そのままではない)文を送った。
 合唱団では常に最年長であったので、以前に家人から「若い人は、居てもらっては困ると思っても面と向かって言えないのよ」と指摘されて5年前に代表を代ってもらい、もうそろそろ退団をと思っているところだった。

 前代表の転勤のため繋ぎの代表になって迎えた24年前の第7回定期演奏会。その時、団員は31名だった。
 プログラムに、団員の名前、勤務先、誕生月日、星座、血液型(当時は個人情報の意識も今日ほどでなかった)と、その人となりを200字程度で紹介した。実は代表といっても、宴会のとき乾杯の音頭をとるくらいしか仕事をしていなかったから、せめて代表の挨拶文はきちんと書かねばと思い、ついでに団員の紹介文も書いたのだ。
 現在も私を含め三人だけ、その時の団員がいる。

○○○○ 11.17 A 蟹座 市立KH高校国語教師
 有島武郎と源氏物語が専門。物語に準え若かりし頃(いえ、まだ若いのです)の恋の経験をそれとなく織り込んで生徒に話しているのです。生徒思いのいい先生。
○○○○ 1.30 B 水瓶座 ステーションDp.フルーツ・ヤマト 明るい笑顔と若さは、毎日色とりどりの新鮮な果物を手にしているからでしょうか。素直な人柄は、まさに朝露を含んだいちごのようです。

 プログラムの挨拶文も、来場者に対するお礼というニュアンスよりも、アイオーンという合唱団はこういう方向を目指したサークルであるということを、むしろ団員に向けての私の想いを綴ったようなものでもあった。
 19年間代表をしたが、表現形は異なっても趣旨はいつも一緒で、毎回同じようなことを書いていた。
 過去のプログラムを開いてみると、おおよそ次のようなことを、取りとめもなく書いていた。

 年齢幅もあり職業も異なる様々な人が音楽をするために毎週集っていることは、単に趣味にとどまらない、精神的に豊かに人間らしく生きる「糧」を求めているといっても過言でない。(もう四半世紀も前、若かったな)

 14世紀の音楽形式は、複数の声部が互いに独立的に進行しつつも調和し合って、横の線的な流れに重点を置いたポリフォニーが15・16世紀にその全盛期を迎える。
 当時は異常気象やペストの流行、開墾運動も止まって穀物生産も停滞するなど、農村共同体もそれを守る貴族権力も自立性を失い、農地を売り、人口の都市集中と相まって「孤独な個人」が生まれていた。それとともに、ロマネスクのような大きく眼を見開いて明るい未来を凝視する時代は去り、より内面的な豊かさを求める、個性の存在感、他者との共感意識、美意識の調和など、それがポリフォニーの心でもあった。
 そして、芸術は理性的な眼科(視覚・絵画彫刻)から、より情緒的な耳鼻咽喉科(聴覚・器楽声学)へと進んでいったのであった。
 音楽は時間の芸術であり、メロディは一瞬前の音と今の音を繋げ、さらに一瞬後の音を予想するという、音の過去・現在・未来を記憶と予知で結び合わせたものであり、そのことを通して人間の情調を紡ぎ、感興を呼び起こす、簡潔な脳の生理機能を活かしたシステムだ。
 未来への歩調がリズムであり、合唱は肉声による「今」という時にしか与えられない重層する声が創り出すハーモニーを添え、合唱音楽全体を創出する。
 合唱人には歌っているその瞬時、瞬時がまぎれもない人生の時であり、歌を通して想いを共有・共感する合唱団は、そのプロセスを楽しむ温雅なソサィエティだ。
 音楽を創るということは、「今」を捉えようとする果てしない営みで、歌うことは未だ来たらぬ時を現在というキャンバスに音を定着させていく作業であり、従って演奏会は、限られた時間と空間で催される、時の「一回性」を強烈に意識させられるものであり、共に創る印象深い出来事、団員個々にとっても、まぎれもない「私の人生」の一部であり、文字通り息づかいそのものなのだ。
 音楽よって結ばれた集団として、日頃の管理される他律的な時間から解放されて、一緒に居る友との調和を意識しつつ歌うという主体的で自立的な自己実現と共感は、現代社会の特性を越える暖かなコミュニティへの希求であり、Chor Aionの存在もそこにあるのだと思う。

 静けさの中から現われ、沈黙の彼方に消えていく音。
 合唱は斎藤佑樹選手が言う「仲間」とともに音楽を創造するプロセスを楽しみ、理想とする音楽づくりの魅力によって現実を中和しようとする営みとも言えまいか。
 ホモ・ルーデンスとして「遊び心」をもった合唱団として、健康なるエピキュリアンでもありたいと思うのだ。
 一ヵ月半後に迫った演奏会、ともども努力をしてお客さんにも歓んでもらえる、いい演奏会にしたいと思う。

カテゴリ:ニュース・その他

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