素浪人の『万葉集漫談』(144)…家持の名歌と、藤原仲麻呂の台頭。

(144)春の園 紅にほう 桃の花
     下照(シタテ)る道に 出で立つ娘子(ヲトメ)
       巻十九・4139  大伴家持
大意・ 春の苑に咲く桃の紅い花が一面に照り映えて、鮮やかに染まった樹下の小道に、立つ乙女の雅びな姿がなんとも美しい。
解説・ まるで絵から抜け出たように乙女を描いた歌です。家持の新妻もこのころ越中を訪ねており、乙女の姿に重ねた妻の坂上大嬢だったかも知れません。幻想的で魅力のある歌です。

(144’) もののふの 八十娘子(ヤソヲトメ)らが 汲みまがふ
      寺井の上の 堅香子(カタカゴ)の花
       巻十九