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よくあるご質問

素浪人の『万葉集漫談』(144)…家持の名歌と、藤原仲麻呂の台頭。

(144)春の園 紅にほう 桃の花
     下照(シタテ)る道に 出で立つ娘子(ヲトメ)
       巻十九・4139  大伴家持
大意・ 春の苑に咲く桃の紅い花が一面に照り映えて、鮮やかに染まった樹下の小道に、立つ乙女の雅びな姿がなんとも美しい。
解説・ まるで絵から抜け出たように乙女を描いた歌です。家持の新妻もこのころ越中を訪ねており、乙女の姿に重ねた妻の坂上大嬢だったかも知れません。幻想的で魅力のある歌です。

(144’) もののふの 八十娘子(ヤソヲトメ)らが 汲みまがふ
      寺井の上の 堅香子(カタカゴ)の花
       巻十九・4143 大伴家持
大意・ 寺の井戸の水を汲む大勢の乙女たちがさざめき入り乱れて、井戸のほとりにひっそりと咲く、ひと群のカタクリの花よ。
解説・ もののふの→八十にかかる枕詞  寺井→お寺の境内にある井戸  堅香子→カタクリ
当時、水汲みは乙女たちの仕事でした。華やかに立ち働く若い少女たちの動きと、ひっそりと下を向いて紫に咲くカタクリの花の対比が見事で、語調の整う名歌とされます。『万葉集』には約1700首、150種の植物が詠われていますが、カタクリの歌は、この1首のみです。

(144’’) 朝床に 聞けば遥けし 射水川(イミズガワ)
        朝漕ぎしつつ 唱(ウタ)ふ舟人
       巻十九・4150  大伴家持
大意・ 朝床のなかでじっと耳を澄ますと、朝漕ぎする射水川の船頭の舟歌が遠く遥かに聞こえてくることだ。
解説・ 上記3首とも750年の歌です。家持は翌年少納言となって奈良の都に帰るので、越中守としての任務を終える安堵感や、帰心矢のごときであった都への郷愁も、忘れたようにこの年、他にも数多くの歌を遺しています。

この750年には、台頭してきた藤原仲麻呂によって、遣唐使帰りの学者として久しく孝謙天皇の教育指導を担当していた吉備真備が、筑前守に左遷されます。そして第10次遣唐使として藤原清河が任命されるのです。
光明皇后の権限強化を企図した紫微中台がいよいよ力を強く持ち、その長官となった藤原仲麻呂の勢力はやがて左大臣橘諸兄のそれを凌ぐことになります。

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