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よくあるご質問

『イタリア24の都市の物語』

池上英洋著『イタリア24の都市の物語』集英社新書。NHK教育テレビのイタリア語講座テキストに、「イタリア 一歩奥へ」と題して連載されたものをまとめた本。
 オールカラーの図版が多数掲載されていて、24都市に纏わる人物、社会とそのエピソードが綴られている。当時の資料からの翻訳引用もあり、初めて知ることも多かった。
 イタリアにも当然県民性みたいな、また町の雰囲気というものもある。著者は、フィレンツェは京都、ミラノは東京、ナポリは大阪という感じに加えて、シエナと奈良、ボローニャと名古屋を対置している。いずれも町ごとに特色があり、さらに古い歴史を重ねた都市ならではのそれぞれの魅力があるということでもある。
 サン・レオ(San Leo)、宮崎駿の『カリオストロの城』という作品があるそうで、高名な錬金術師として名を馳せたカリオストロ伯爵(本名をジュゼッペ・パルサモ、手品や星占い、若い頃は詐欺を働いたりフリーメイソンの正式会員であった)は各国のサロンに出入りし、マリー・アントワネットの「首飾り事件」に巻き込まれて妻とともに逮捕される。嫌疑は晴れたが危険分子として目を付けられ、1789年末パリで再逮捕。終身刑となりサン・レオの刑務所に収監される。サン・レオは切り立った断崖絶壁の上にあり、そのてっぺんの平らなところが町となっている。ダンテの『神曲』にも詠まれている天然の要害で難攻不落、10世紀に2年間だけイタリア王国の都でもあったという。現在人口300人。世界遺産の町。
 アッシジ(Assisi)、というと、この地で生まれ亡くなった聖人フランチェスコ。本名をジョヴァンニ・ベルナルドといい、父はフランスと織物取引をしていた商人で、母は彼の地で見初めたフランス人だったという。生まれた子どもをフランチェスコ(フランス人)と呼んで可愛がった。成人してアッシジ軍の一人として隣国ペルージャと戦ったが、敗北して捕虜となる。解放後、南へ遠征する軍に加わって途中立ち寄ったスポレートの町で、「どこへ行くのか」と問いかける不思議な声を聴く。この瞬間、彼の人生は一変する。
 自分の持っていたすべてを貧しい人に分け与え、郊外にある壊れかけ放棄された教会を、たった一人で建て直す。彼のこうした奇行に最初は笑っていた人も、その熱意と真摯さに打たれる者も出始め、28歳のとき11人の弟子とともにローマ教皇と会い、修道会としての認可を得る。従順、純潔、清貧をモットーとするフランチェスコ修道会を立ち上げ、祈りと奉仕に明け暮れる集団生活を始める。43歳で亡くなったが、全欧に数万の修道士を抱え、1000を越える修道院を擁するほどに急成長し、2年後に聖人に叙される。
 ヴィンチ(Vinci)、1452年4月15日土曜日の夜中の3時に、レオナルドと名付けられた子が生まれた。レオナルド・ダ・ヴィンチの祖父は公証人であり、その証書に、私の孫、息子のセル・ピエロの子が生まれたと書き残す。セル(ser)とは公証人を務めていたことを意味する。公証人証書には洗礼に立ち会った近所の人たちの名が連なるが、町の名士の第一子にしてはささやかであったのは、レオナルドが婚外子として生まれたからだった。
 レオナルドの母カテリーナはセル・ピエロと結婚することなく、釜焼き職人に嫁いでいる。婚外子であるということで、被扶養者の税の減免控除が受けられず(書類が残)、公証人組合規定によって親の職を継ぐこともできなかった。知識階級の子息ならば普通に与えられるラテン語や算盤(アバコ)などの基礎学習の機会も与えられず、幼いうちに矯正されるはずの左利き筆記もそのままであった。両親はフィレンツェに出てしまい、幼いレオナルドを育てたのは、初孫を溺愛した祖父母であり叔父フランチェスコであった。
 しかしその叔父は我が子のようにレオナルドを可愛がり、その遺産相続人に加えたほどだった。
 公証人ではなく、なかば強制的に職人の道へと進まざるを得なかったレオナルド、万能人レオナルドを育てたのは、婚外子という出自にほかならない。
 このほか、アルキメデスが風呂につかって、浴槽から溢れ出た湯を見て閃いた原理、エウレカ(わかった!)と叫んだシラクーサ(Siracusa)の町、『ヴェネツィアの花形娼婦総覧』に名を残した女流詩人ヴェロニカ・フランコとヴェネツィア(Venezia)、カノッサの屈辱で有名なCanossa、ルネサンスで最も美しい女性、シモネッタ・カッターネオとフィレンツェ(Firenze)、シエナ(Siena)、ペルージャ(Perugia)、ローマ(Roma)、ロミオとジュリエットのベローナ(Verona)などなど、24の都市の美しい写真とともに町の歴史が楽しく学べる。

カテゴリ:ニュース・その他

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