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よくあるご質問

『智恵子抄』

一人暮らしが始まって、一か月と少し、
家内が果たしていた役割の多さ、
重さを日々思い知らされている。

今日は、三十五日なので、
お休みをいっただき、
掃除、洗濯、洗い物をかたづけた。

家内のお膳に新しいご飯や精進もお供えした。

家内がいる時は、
家事のすべてをやってもらい、
のほほんとしていた自分のエゴに嫌気がさしてくる。

寒風の中、
暖房機の灯油を入れるのも、
たいていは家内にやってもらっていたのに、
家内に対する感謝の心もなく、
今になって悔んでいる。

情けないほどダメな奴だった。


今日も、この詩を読んで泣いてしまった。




梅 酒

死んだ智恵子が造つておいた瓶の梅酒は

十年の重みにどんより澱(よど)んで光を葆(つつ)み、

いま琥珀(こはく)の杯に凝つて玉のやうだ。

ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、

これをあがつてくださいと、

おのれの死後に遺していつた人を思ふ。

おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、

もうぢき駄目になると思ふ悲に

智恵子は身のまはりの始末をした。

七年の狂気は死んで終つた。

厨(くりや)に見つけたこの梅酒の芳(かお)りある甘さを

わたしはしづかにしづかに味はふ。

狂瀾怒涛(きょうらんどとう)の世界の叫も

この一瞬を犯しがたい。

あはれな一個の生命を正視する時、

世界はただこれを遠巻きにする。

夜風も絶えた。


「日本詩人全集9 高村光太郎/『智恵子抄』」新潮社より

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