素浪人『万葉集漫談』(171話) …国のために働く人たち、それを身近に見守る家族の思い。

(171) 君が行く 海辺の宿に 霧立たば
     我が立ち嘆く 息と知りませ
       巻15・ 3580  遣新羅使人の妻の歌
解説・ 貴方がおいでになる海辺の宿に、霧が立ちこめたらそれは貴方を恋い慕い、貴方を想って嘆く私のため息と、お思い下さい。
 …遣新羅使人の夫との別れを悲しむ妻の、耐えがたい思慕の念が詠まれました。736年6月難波を出発した遣新羅船は、夜になると途中の港の海辺に碇泊します。
 まだ電灯のない当時の航海のことです。舟の大きさも設備も貧弱で、航海技術もプアーな、危険を伴う大変怖い船旅。日本海の荒海を超えるのです。万葉時代、そ