素浪人の『万葉集漫談』(175話) …妻のため息が聞こえる。

(175) 我がゆゑに 妹(イモ)嘆くらし 風早の
       浦の沖辺に 霧たなびけり
           巻15・3615 遣新羅使

解説・ (怖い船旅を続ける)私のことを思って妻がため息をついているらしい。(ここ広島県岩国市東北部の)風早の浦の沖に、今一面に霧が立ち込めている。…という歌です。

立ちこめる濃霧に妻の熱い思いを込めた呼吸を、息を、体感している古代人の姿が見えるようですね。

(175') 真楫貫(ヌ)き 船しいかずは 見れど飽かず
       麻里不布の浦に 宿りせましを
          巻15・3630 遣新羅使