素浪人の『万葉集漫談』(178話)…対馬の遊女の出迎え。

(178) 黄葉の  散らふ山辺ゆ 漕ぐ船の
         にほひにめでて 出でて来にけり
       巻15・3704 対馬の娘子・玉槻(タマツキ)
解説・ もみじ葉の散りしきるこの島の山沿いを漕いでくる、まことに見事な色どりの船の美しさに惹かれて、お迎えに参上しましたわ。 …優しい女性の声が聞えてきそうな歌。
ここまでの惨憺たる船旅に、この対馬の遊行女婦(うかれめ)の
心やさしい歓迎を、一行はどのように受け止めたでしょうか。

(178') 玉敷ける 清き渚を 潮満てば
       飽かず我れ行く 帰るさに見む
        巻15・370