素浪人の『万葉集漫談』(182話)…あなたに逢うまでは、死に切れません。

(182) 帰りける 人来れりと 言ひしかば
       ほとほと死にき 君かと思ひて
        巻15・3772 茅上娘子(チガミノオトメ)

解説・ (流刑の人たちが大勢)帰って来たと人が言うのを聞いて、(ほんとに天にも舞いお上がるように嬉しくって)もうちょっとで死んでしまうほどでした。もしや、貴男にもお逢いできるかと思って!…という意味の歌です。
 740年(天平12)の大赦で穂積老らが流刑先から戻って来ましたが、彼女の愛しい中臣宅守は大赦から洩れていたのです。
(中西進『万葉集』全訳注原文付、新潮社『万葉集』古典集成(4)など。741年9