慈悲・人への信頼の優美さ

日本の昔話には、『浦島太郎』や『鶴の恩返し』など動物報恩話がたくさんある。
 日本人は人間関係を取り結ぶとき、恩と義理を中心としての付き合いを意識する。これは原理的には受けた恩にはお返しをしなければならないという原則から成り立っているのだが、本来的には「恩」は動物報恩話のように無償の行為で、自発的に善意に基づいて施し、且つ、お返しを期待しないものであった。だから浦島太郎も夕鶴の与ひょうも、お返しをしてもらおうなどとは露ほども思っていなかったはずだ。
 一方、義理は金銭の貸借勘定だから、「あそこに義理がある、いくらだ」と中元や歳暮、香典帳を見て返せば義理は