素浪人の『万葉集漫談』(185話)…古代における、肉親との別れ。

(185) 父母が 頭(カシラ)掻きなで 幸(サ)くあれて
        言ひし言葉(ケトバ)ぜ 忘れかねつる
      巻20・4346 丈部稲麻呂(ハセベノイナマロ)

解説・ 父さんと母さんが、こもごもに僕の頭を掻き撫でて、「どうぞ達者でな(元気で帰ってきてくれよ)」と言ってくれた(見送りの時の)あの言葉が忘れられないよ。…という若い防人の歌です。
 ・幸くあれて→幸くあれと、言葉(ケトバ)→言葉(コトバ)、の  東国訛り。
防人は21歳から60歳までの男子が徴用されており、「頭掻き撫で」というのは、別れ際の習俗か儀礼でもあったのでしょうか。