素浪人の『万葉集漫談』(189話)…東北大震災で生まれる悲劇に思いを寄せて。

(189) 見わたせば 向つ峰(ヲ)の上(へ)の 花のほひ
        照りて立てるは 愛(ハ)しき誰が妻
   巻20・4397 兵部少輔大伴家持(オオトモノヤカモチ)

解説・ 見わたすと向こうの丘の上には花が一面に美しく咲いて、その花に照り映えるるように女性が立っている。何と麗しく可憐な女性なことよ。一体、どなたの夫人なのか…。といった女性讃歌の歌です。
 ・兵部少輔→兵部省の次官。
家持は754年に任官しており、755年に防人が交替派遣される防人歌を集めさせ取捨選択した84首が、現在、私達が見ている巻20に掲載されている歌です。防人たちの望郷