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激しい津軽三味線の旋律のなかに揺れる、笠女郎の恋歌。…素浪人の『万葉集漫談』(197話)

目を覆う東日本大震災の被害状況の動きを刻刻とTVに追いながら、昨年歩いた3泊4日、東北6県名所めぐりのバスツアーを思い起こしている。
海と陸と青い空がよく調和した素晴らしい眺望の旅であったし、裏日本の風光や太平洋の明るい日差しを浴びた三陸地方の絶景が目の底に今も焼き付いている。

ここを未曾有の大地震と大津波が襲い、瞬時のうちに多くの人命を、家屋を、樹木や車を、なぎ倒し押し流して、荒廃した修羅場を繰り広げたのである。

そして青森に一夜を過ごした折のことでした。ホテルサービスの一環であろうが、和服姿の美しい女がロビーに現れて、叩きつけるような激しい旋律とテンポで津軽三味線を弾き始めたものです。

いま改めて今月の「ひめくり万葉集」(NHK)の終り近くに眼を通すと、三味線演奏家(津軽三味線ではないが)で名を成す本條秀太郎の選歌がある。笠女郎が大伴家持に贈った恋歌29首のうちの次の一首です。

(197) 夕されば 物思ひ増さる 見し人の
      言問ふ姿 面影にして
      巻4・602 笠女郎(カサノイラツメ)
解説・ 夕方になるとひとしお物思いが募ることです。逢瀬のなかで話しかけて下さった貴方の甘い囁きが、目の前に幻のように揺れ動くことです。…という恋文です。

笠女郎の歌は名歌が多く、彼女の才知が躍如として男心をくすぐる作品ばかりで、当時の家持の心を惹きつけなかったのは、この女郎に勝る多くの女友達に囲まれて有頂天の時代にいたということでしょう。…(笑)

津軽三味線の撥で叩きつけるような激しい旋律の中で、失意のうちに故郷へ帰って行った笠女郎の幻影が揺れるし、巡遊した三陸リアス海岸の美しい風光と、大津波と地震による被害地の廃墟の姿が幾重にも重って、今はただ祈るような気持ちで、この悪夢から覚める日の早いことを、願うのみです。

カテゴリ:ニュース・その他

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