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よくあるご質問

団子より花

阿刀田高著『日本語を書く作法・読む作法』角川文庫、米原万里著『心臓に毛が生えている理由(わけ)』角川文庫、講談社編『ヨーロッパの世界遺産3スペイン・ポルトガル編』講談社α文庫、を読了。
 前二著は新聞、雑誌などに寄せた随想を集約したもので、幾つもの短文が綴られている。
 『日本語を書く作法』では、告白的文章作法として、《文章は短いほうがよい。わかりやすい。文章家でもない限り、短く、達意の文章を綴るのが第一義ではあるまいか》と。
 《“父が去年のクリスマスに買ってくれた太い万年筆を、大学に受かって上京してした従兄弟に「これ、ほしい」と奪われてしまって、今は後悔している” なんて書いてはいけない。
 “大切な万年筆を従兄弟に奪われてしまった。父が去年クリスマスに買ってくれた太いペンだ。従兄弟が大学に受かり上京してきて、いきなり「これ、ほしい」って・・。残念無念。後悔している” とか。いくつにも分けて書くのがよい》。

 『心臓に毛〜』では、頭寒足熱、は《江戸時代に「頭寒足熱、田子の日照りに富士の雪」という調子のいい名句で人口に膾炙していたらしい》と。そして頭寒足熱のための伝統的暖房器具の湯たんぽや、水嚢や氷枕という小道具を若い人のために解説している。
 「花より団子か、団子より花か」では、スターリンによる粛清が最高潮に達した1937年、スパイ容疑で逮捕銃殺された男の妻というだけでラーゲリに5年間も閉じ込められた当時20歳の妻。夫の容疑が事実無根だったと国が認めたのは銃殺後30年経ってからだった。
 米原さんはラーゲリについてダンボール二箱分の資料を読破して、黄色い花束を持ってガリーナさんに面会した。
 ラーゲリには花は全く無かった。だから釈放されて町にたどり着き、駅前広場で花を目にした瞬間、その場を動けなくなって日が暮れるまで見とれていたという。
 「へえ、団子(ピロシキ)より花なんですねえ」と思わず感嘆して、日本の諺の説明をした。「ちょうど《ウグイスを寓話では養えない》に相当するのですよ」「それがね、寓話なしには生きていけないんですのよ。本当よ、寓話のおかげで生き延びたんですよ、私たち」。
 《ラーゲリ生活で最も辛かったのは、一日12時間の過酷な重労働でも、冬季の耐え難い寒さでも、蚤シラミの大群に悩まされ続けた不潔不衛生でも、来る日も来る日も干からびた黒パン一枚とスープという貧弱な食事のために四六時中ひもじかったことでもない、というのだ》。
 《力の湧き出る根元を絶ち、辛くも残った気力をそぎ落としていったのは、ラジオ、新聞はおろか肉親との文通にいたるまで外部からの情報を完全に遮断していたこと、そして何よりも本と筆記用具の所持を禁じられていたことだった》。
 《そういう状態に置かれ続けた女たちが、ある晩、卓抜なる解決法を見出す。日中の労働で疲労困憊した肉体を固い寝台に横たえる真っ暗なバラックの中で、俳優だった女囚が『オセロ』の舞台を独りで全役をこなしながら再現するのである。一人として寝入る女はいなかった。
 それから毎晩、それぞれが記憶の中にあった本を声に出してああだこうだと補い合いながら楽しむようになる》。
 《トルストイの『戦争と平和』やメルヴィルの『白鯨』のような大長編まで。「あんな悲惨な境遇にいた私たちが、アンナ・カレーニナに同情して涙を流し、イリヤ・イリフとエウゲーニー・ペトロフの『十二の椅子』に抱腹絶倒していたなんて、信じられないでしょうね」。肩をすくめてガリーナさんは静かに笑う。
 夜毎の朗読会は、ただでさえ少ない睡眠時間を大幅に侵食したはずなのに、不思議なことが起こった。女たちに肌の艶や目の輝きが戻ってくる。
 娑婆にいた頃心に刻んだ本が彼女らに生命力を吹き込んだのだ》。
 
 『ヨーロッパの世界遺産』は、1200円の文庫本ながら全編美しい写真を駆使し、イベリア半島の世界遺産を紹介している。「この人に注目」というコラムで、アントニオ・ガウディについて触れている。
 カタルーニャの銅版器職人の子として生まれ、バルセロナの建築学校を卒業。その後大富豪エウセビオ・グエルの目に留まり、建築家として大成後、サグラダ=ファミリア(聖家族)贖罪聖堂建築の後任を依頼される。
 聖堂の建築に際して、知識を深めるにつれて熱心な信徒になって生活は禁欲的なものとなり、報酬はわずかしか受け取らず、聖堂の地下室で寝泊りして仕事に没頭した。自ら資金集めをしながら。
 彼自身も、完成まで数百年かかるだろうと予測していたが、1926年6月、路面電車にはねられ、みすぼらしい姿をしていた73歳の老人は病院の慈善病棟に運ばれたものの放置され、高名な建築家ガウディとわかったときには手遅れであった。
 先日の飲み会で、資金も潤沢に集まってあと10年で完成すると友から聞いたが。

カテゴリ:ニュース・その他

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