趣味でつながる、仲間ができる、大人世代のSNS、趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)

よくあるご質問

虚妄の九州王朝(安本美典著)

5月13日の日記に書いた主題の本を読了した。
九州王朝説は心情に訴えやすい要素を持っているものとして、特に九州在住の学者、論客にはこの傾向があるとする。
私は九州に王朝があったと言う説は、何等の文献、伝説が残されていないので、豪族が地域を支配していた程度には考えていた。
或いはと期待する部分もあったが、この本を読んで、根底から木っ端微塵に打ち砕かれてしまった。

副題の「独断と歪曲の”古田武彦説”を撃つ」とあるとおり、九州王朝説のみならず
・邪馬壱国説 (邪馬「台」国はなかった、台(の本字)は神
聖至高の文字論、邪馬台国→大和をヤマトと読む訳を安本氏は説く)
・真実の東北王朝説 (東日流(つがる)外三郡誌真書説、和田家の当主の捏造:私の日記「日本の偽書」にも書いた)
・タイ国実在説 (隋書タイ国伝(タイは倭の字に似ており倭の誤りと思われる)は隋書の前後に書かれた倭国伝と同様の内容を記している)
・九州年号説 (江戸時代後期の国学者鶴峰戊申が或写本に書かれていたと言うことで、この言葉を使っているがその写本は現存していない)
・毛人=毛民説 (エミシは山海経などに見える毛民を引き九州の東に当る中国・四国地方の人々とする)
・衆夷=都を取り巻く九州の地の民説 (毛人と衆夷は倭の五王の中国への上表文の中に平定した国として書かれていた)
・貴国=基肄国説 (書紀の神功記に百済記から引いた相手を敬って呼ぶ「貴国」を大宰府の近くの基山周辺を領域とするキ国とする) 
・奴国=糸島郡平野部説 (小山修三氏が遺跡数から算定した弥生時代の人口密度から2万戸の広さとしては狭い) 
・一大卒=一大軍団 (定説ではイト国に常駐する役人の官職。その他倭人伝の中の用語についての数々の解釈の誤りを指摘)
・神功皇后非実在説 (広開土王碑などによれば、倭人が半島を攻略したことはあきらかであり、日本にも何らかの史実の伝承があったと思われる)
・和歌山県隅田八幡神社人物画像鏡献上又は贈与説 (記紀が書かれた後のある時期に大和朝廷に献上又は贈与した・・記紀の後の史書に何の記事もない)

など総てについて細かい事に亘って、夫々論理的実証的に成り立たないことが論じられており、総て納得させられた。

上記の内容について、此処に述べることは、多くのスペースを必要とするので、概略のみで詳細は省略する。
疑問のある方は、是非とも直接本書を読んで頂きたい。
特別肩入れする少数の人を除いて、誰一人として古田説に賛同する学者がいないのも道理であると思った。
古田氏はこれらの学者を、自説を理解できない或いは発見し得なかった無能者呼ばわりをしてこき下ろし、ファンの喝采を浴びている。
古田氏の議論は、どの論をとってみても、事実と意見を絶え間なく混同し、単なる仮説を真実として主張しているだけである。

最後にまとめとして、古田氏所説の特徴的な性質として、
(1)みずからの想念により説を立て、
(2)みずからの優秀性、卓越性を信じ、そのゆえに自説の正しさを信じ、
(3)他説を論難罵倒し尽くすことによって、自説の優位性を誇示し、
(4)事実や論理に合っていないとの、どのような批判も受け付けず、
(5)自説に都合の良い根拠のみを、繰り返し実に熱心に主張し、
(6)自説の無謬性を信ずるが故に、非実証的、非論理的になる。
と指摘し、古田氏が中国の史書を絶対的なものとし、事細かに調べ(実際には洩れがある)総て書かれている通りと断定し、日本の史書を軽んじているとする。

この中で(5)の自説に都合の良い根拠のみを主張することは、誰にでも見られることで、屡感ずるところではある。
古田氏には宗教的カリスマ性と、弁舌巧に詭弁を弄す才能があり、信念の強さや文章力や他説批判の激しさや執拗さの故に一定の説得力が生まれる。
その故に古田説、従来の通説・定説を小気味よくやっつける古田教に陶酔し、これを絶対なものとしての熱烈なファンが生まれる。まさに新興宗教と同じと思う。

日本の古代については、確実に主張できることは、甚だ少ないので、このような分野は想念が入り込みやすい。
ロマンを求めて空想も広がる。そしてその空想を絶対の真実と思い込む人も出てきやすい。と安本氏は言う。

私が古田氏の本を読む気がしないのは、安本氏の指摘していることを感じ取っていたからであることを、この本によってあらためてはっきりと知ったが、
この感慨があるだけに、安本氏の言う「想念・思い込み」が逆の作用として、安本氏の言うことは本当である、絶対であるなどと思わないように気をつけたい。
従って、安本氏の述べること総てがその通りであると断定することは憚られる。即ち安本教信者にはならないと言うことになろうか。(これだけで字数リミットになった)

カテゴリ:ニュース・その他

コメント

コメントはログインすると見られるようになります。