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よくあるご質問

名歌200選??…素浪人の『万葉集漫談』((221話)

「…やうやう白くなりゆく、山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる…」。 言わずと知れた、清少納言「枕草子」の冒頭の名文、春の叙景です。そんな風景を思い浮かべたのでしょうか、カメラに凝った近所の友人が、早朝の白馬を撮りに行くというのです。
好奇心の強い私のことです。午前2時に家をスタートする彼の車に同乗させてもらうことにしました。幸い真夜中の高速道は車も少なく、白馬には午前4時半に到着。
全山雪におおわれた白馬が朝日の茜色に映えて輝く雄姿を瞥見。
垣間見た至福の思いは、しかしほんの一瞬のことでした。
なにぶん梅雨の合間を狙っての衝動的な行動でしたし、その刹那を除くと殆どは、霧に包まれたままの白馬で、友人が狙ったカメラアイの演出はついになかったのです。
全くズブ素人の私も手持ちの簡易デジカメで、何枚かパチパチと撮影。それがご披露した写真です。(笑)

ただ、この後に訪れた、白馬村青鬼(アオニ)という棚田が広がる村落から見る白馬には、古代日本人の耕作や農民の苦労の歴史が刻まれているようで去りがたく、心うたれるものでした。狭くて傾斜の多い荒れた土地を切り開き、石垣を積み、畦の細道に石を運ぶ難作業を繰り返してこられた古代農村の方々の、難渋の歴史がそこに見られたからです。
たまたま次にご紹介の二人の万葉歌人の詠った歌の気持ちと、相似た心境を抱いたような思いでした。

(221)  楽波(ササナミ)の 志賀の唐崎(カラサキ) 幸くあれど
         大宮人(オオミヤビト)の 舟待ちかねつ
                 巻1・30 柿本人麻呂
大意・ ささなみの志賀の唐崎は昔の(栄えた近江の都当時)と変わらぬ景色のままであるが、(華やかな衣装を着た)大宮人を乗せて湖を行き来したあの舟は、もう、いくら待っても見ることはできないんだなぁ!という深い嘆きのため息を聞くような歌。    

(221') 古(イニシヘ)の 人に吾あれや 楽波の
          古き都を  見れば悲しき
                 巻1・32 高市黒人(タケチノクロヒト)
大意・ 昔(近江京の栄えた時代)の私ではないのに、ささなみの荒れ果てた古都(朱に塗った官船の往来もなく、煌びやかな高楼の並び立つこともない)を見ると、まるで、自分もあの時代を生きた人のように悲しみが蘇ってくることだなぁ。…という深い慨歎の歌です。

解説・ いみじくも壬申の乱で焼け落ち、荒廃した近江朝の跡の、幻影をたどる、万葉第2期の二人の著名歌人が、古都とそこに生きた人々への鎮魂を込めた重く深いため息があたかも二重奏のように奏でられて、重なりあって響くのを覚えます。

そしてそれは、真夜中に家をでて、訪れた早朝の青鬼(アオニ)の早苗田風景をみた私を、いつしか鬼籍の世界に誘いこむように立ち止まらせたのです。
現代人になお息づく古代からの人々の生活の歩みこそが、『万葉集』
に学ぶ大きな喜びの一つなのでしょうね。

カテゴリ:ニュース・その他

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