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よくあるご質問

「考古学から見る邪馬台国」読後感

この本は、早稲田大学公開講座「オープンカレッジ」の7人の先生方の講義を基にして本として纏められ、1996年に発行された。
倭人伝と考古学
邪馬台国への道程
邪馬台国の習俗
鏡と玉と金印
女王国と卑弥呼の宮室
卑弥呼の墓
東アジアの中の邪馬台国
について、夫々専門の先生が詳しく論じられている。何れも邪馬台国大和説に立っている。
最後に文献学の泰斗、三王朝説を唱えた水野佑早大名誉教授を交えての座談会を添えている。

従来、考古学サイドとしては、圧倒的な出土品から九州説が優勢であったが、この講義の段階では、大和説に傾きつつあり、大和説としての解説となっている。
水野教授はここでも自説の九州説を力説されている。
確かに、倭人伝だけを資料として邪馬台国を見ると、帯方郡から女王国まで1万2千里、その内狗耶韓国までは7千里だから、残り5千里となる。
倭地を参問するに周旋5千里ばかり、とある。
この範囲に倭国は納まっていなければならず、且つ方角も略南を指しているから、九州島の中にあることになる。

私の考えでは、陳寿は日本に来て見聞したわけではなく、遣使朝貢の使者又は使訳から魏の役人が聞き取って記録した物によって書いている。
伝えられている魏志倭人伝は版本であり、原本とは異なることも考慮すべきである。
版本は邪馬台国を邪馬「壱」国としているが、之以後の中国史書は、邪馬台(旧字)国として「壱」とは書いていない。
であれば、当然聞き違い、誤解、書き違い、写し違いもあったと思われるから、如何に倭人伝がその時代近くに書かれた一級資料とは言え、絶対と言うことはない筈である。

そして、漢以前から中国へは何らかの形で日本の情報は伝えられており、それが徐福の船出にも繋がっているわけだから、
日本のイメージはそれとなく醸成されて来ていると思われ、その古い情報が倭は九州辺りにあることに固定され、
又、中国当局にとって、特に日本を調べておく必要性も無かったと思われるから、使者に根掘り葉掘り聞くことも無く、
使者も必要以上の事は言わなかったのではないか。
であるから、沿岸部の情報は沢山あって、正確な記事となっているが、奥地の方は曖昧模糊となっている。
それでも、九州以外に倭地は広がっていることだけは認識していた。
中国の動乱は極東にも影響し、列島内でも倭国大乱を惹き起こしている。
それだけに、列島内には大陸の情報に敏感となっていた筈であり、大乱終了後共立された卑弥呼も公孫氏が魏に討たれると、
早速魏に朝貢している訳である。

魏の使者は伊都国まで来て、卑弥呼に下賜した品々を其処で引渡し、卑弥呼の宮殿までは届けなかった。
それ程倭人は信用されていたことになるのだろう。
若し、宮殿まで届けていれば、邪馬台国の事も、道筋はいま少し詳しく書けるだろう。
女王国と争っていた狗奴国にも行かず、旗を見せるだけでお茶を濁した。
旗に権威が有って、狗奴国がそれを見るだけで懼れるものだったのであろう。

魏の使いが九州に上陸すると、木々が生い茂り、先も見えないくらいであったと書いているが、これは中国では黄河付近の乾燥地帯では見られぬ風景であり、
長江から南の照葉樹林帯と同じであるから、南支海岸地帯の海南島や台湾辺りをイメージし、東冶の東にあると書いた。

倭人伝には倭には山に丹があると書いているが、丹は辰砂と思われ、これは大和と四国に産する。九州には微量しかなく、献上するほどは出ない。
鏡も漢の鏡は九州に沢山出るが、魏の鏡と思われる物は、やはり三角縁神獣鏡が有力で、之は大和周辺に圧倒的に多い。

墓も巨大な墓は大和にあるが、これは魏への使者が中国の王陵を見てその模倣をしたと思われ、三世紀には九州には巨大古墳は無い。

卑弥呼の宮室も奴婢千人ともなれば、吉野ヶ里復元の領域や建物では小さすぎる。
奈良の中心部の弥生中期列島最大の環濠集落、唐子・鍵遺跡からは高楼を描いた土器の破片が見付かっており、この遺跡は卑弥呼の時代より前の物で、
確証は無いが、既に大型建物は建てられていたと思われる。
又、大阪府の池上・曽根遺跡からは弥生中期の大型建物跡が発掘されているほか、滋賀県でも大型掘立柱建物跡が発掘されている。
これらの事から、従来考えられている以上に、近畿の生産力は大きく、此処に王権が出てくる可能性は非常に高いと言える。

これらの状況証拠から、卑弥呼の宮室のあった邪馬台国は大和である蓋然性が高いと考古学者は考えるようになったのだろう。
水野教授は座談会で、文献の厳密な批判を行えば、南を東に読み替えるなどは言語道断であり、大和説は邪道であるとしている。
然し、確実でない物を絶対視して判断しても、それは所詮不確実なものであり、総合的に判断すべきであるというのが私の持論である。

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