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よくあるご質問

スペイン、情熱の光・哀愁の影

25年前に求めた本であった。森本哲郎責任編集の「世界 知の旅」全10巻の、6『情熱の光 哀愁の影 スペイン』小学館、を読了。このシリーズは未読のものが多い。
 昨日、添乗員さんから電話があった。セビリア、コルドバは既に35℃、北の高地マドリーでも26,7℃ですから、そのお積もりで。またスリだけではなく治安のよくないところもあるので、と注意喚起もあってか少々オーバーに言っているのかもしれないが。
 実は、漠然とスペイン人に対して好印象をもてないでいたのは、コロンブスが新大陸を発見した後、フランシスコ・ピサロが中南米を征服してアウシュヴィツのユダヤ人どころではない4,50年の間に1,400万人の先住民を殺していることだ。
 この本の巻頭に、森本哲郎氏と五木寛之氏の対談があって、その中でこのことに触れて
五木「これがスペイン人の心の中に非常に大きな影を今も落としているのではないか」。
森本「確かにスペイン人はひどいことをやったわけですね。奴隷として連れ出したインディオは非常に弱かった。そこでもっと身体の強い奴隷はいないか、というわけでアフリカが奴隷狩りの舞台となる。そしてヨーロッパの列強のイギリス、デンマーク、オランダなどが中南米におけるスペイン人のような役割を果たす。これもまた凄い犯罪史ですね」。
 スペイン人は向こう見ずなことをやるけれども、人種的な差別観は比較的薄かった。従って征服者のスペイン人とインディオとの混血が一つの民族をつくり上げているのに対して、イギリスはそういうことは全くなかった。実際、イギリス人のアフリカに対する収奪は想像を絶するものであったし奴隷売買は王室の独占事業であった。そしてこれに携わった人たちは道徳的にも尊敬されていたのだった。
 1783年、イギリスで裁判があった。争点は、アフリカから奴隷を満載して航行していた船の船長が、飲料水が欠乏したために百何十人かの奴隷を海へ投棄したその損害に保険が支払われるべきか否かということであった。人道主義者とみなされていた裁判長はこう判決した。「奴隷の場合も、馬匹等が船外に投棄された場合に準ずる」と。

 堀田善衛の2000頁に及ぶ大巻『ゴヤ』巻頭の一行目は、「スペインは、語るに難い国である」と書き出されている。
 スペインは単純なイメージではつかまえられない基層のいろいろな文化がある。最も初期にはイベロ族、次にケルト人がやってきた。イベロ族と交戦したり混交してケルト=イベリア族を形づくる。5世紀にゲルマンが進入し、その一つヴァンダル族がこの半島を占拠する。アンダルシアというのはヴァンダル人の国という意味。
 ゲルマン人に追われたケルト人は最終的にはアイルランドに住み着き、ここにケルト人の伝統が残った。
 アイルランド人の気質はスペイン人とよく似ていて、向こう見ずなところがある。
 アンダルシアからトレド辺りまでかつてイスラム圏だったが、カスティーリャのイザベル女王とアラゴンのフェルディナンド王夫妻が連合してイスラム王を屈服させてカトリック帝国にした。その過程で起きたイスラム文明とカトリック文明の混交から、スペイン的性格が来ているのではないかという。

五木「日本人はスペインに行きスペイン人やスペインの文化を見て、相反する感情を覚えるのではないか。自分が知っているヨーロッパの人に比べて風采が上がらないし、流行は遅れているし、しかし反面、非常に深い畏敬の感情に打たれるような思いをする場面に必ず出合うはずです。スペイン人の気高さと親しみやすさを同時に感じ、いつも混乱するんじゃないかと、それがスペインの面白さだと思います」。

 上記の女王と王には、まだ定まった首都もなければ宮殿もなかった。問題のある地方へは自ら出向いていくという統治形態をとっていたから、1478年セビリアで長男のファン、翌年トレドで長女フアナ、82年にコルドバで次女マリーア、三女のカタリーナは85年にアルカラ・デ・エナレースで誕生している。
 新大陸発見を目指すコロンブスは8年以上にも亘って、渡航許可と支援を求めてイザベル女王の行く先々に現われていた。しかしお互いの条件が折り合わず、失望した大山師は相手をイギリスやフランスに切り替えるつもりでグラナダを去ったところ、サンタフェ村の近くのピノス・プエンテという橋の上でイザベル女王に呼び返され、コロンブスの条件を受け入れるとの返答を得たのだった。
 歴史に「もしも」は言わないことになっているのだが、コロンブスの乗った馬がもう少し足が速かったなら、アジアを除いて、地球上の大部分の人々は英語を話し、プロテスタントになっていたのかもしれない。
 英国王は鬱勃として海上制覇を狙っていたのであるから。
 と『スペイン断章』に、堀田さんが書いている。

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