趣味でつながる、仲間ができる、大人世代のSNS、趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)

よくあるご質問

運命に身を委ねて生きた高貴な女性。…名歌200選25、26 素浪人の『万葉集漫談』(230話)

『万葉集』巻2は昨日の磐姫皇后の歌で幕を開けるが、引き続き天智天皇に愛された過去をもちながら、藤原鎌足の正妻となって後世を過ごす、鏡王女(カガミノオオキミ)の数奇な運命をもの語る、不思議な4首の歌があります。

(230) 秋山の 樹(コ)の下隠(カク)り ゆく水の
            われこそ益(マ)さめ 御思(ミオモヒ)よりは
              巻2・92 鏡王女(カガミノオオキミ)

大意・ 秋の山の木の下を隠れて流れゆく水のように、私の貴方への思いは表には出さなくとも、貴方が私を想ってくださるよりはるかに何倍も大きいと存じます。
解説・ 天智天皇がこの前の歌(巻2・91)で「なれのもとに通いたいし、なれの家を飽くことなく見ていたい。せめて大和の大島の山に建っていてくれたらなぁ」と、彼女への愛を語りかけた歌へ和した返礼の歌です。 男が妻の家を訪う「通い婚」の時代です。
控え目で貞淑な女の立場で語る、何と素晴らしい愛の表現なのでしょう。このような歌で語りかけられる、天智天皇の男心は?となるのですが…(笑)。

(230’) 玉くしげ 覆(オホ)ふを安み 開けていなば
          君が名はあれど わが名惜しも
               巻2・93 鏡王女

大意・ 夜が明けてからお帰りになると、人様に知られてしまいます。
貴方とのことが噂になりますと、貴方にとっては良いでしょうけど、私の浮名が流れては嫌です。困りますわ。
解説・ 何と、この訪問の相手男は内大臣、藤原鎌足なのです。鏡王女は天智天皇の寵愛を受けていましたが後に、大化の改新以来、天皇に知恵と力を貸し続けた大功労者、鎌足に下賜されたようです。
鏡王女は鎌足の正妻となり、後に鎌足が病気になると、山階寺を発願、開基します。 
・「 玉くしげ 覆(オホ)ふを安み」は「開ける」→「明ける」を引き出すための序詞です。 短歌の技法の一つです。
・「玉くしげ」→櫛を入れる箱。 

そして、鎌足は次の歌、巻2・94で「まぁそう言い賜うな。貴女と共寝せずにはおられないのだ。」と居座る歌を詠んでいます。669年の歌とされますから大化の改新以来25年の歳月が流れていますね。
鏡王女はまた、かの有名な額田王(ヌカタノオオキミ)の姉君とされていますが異説もあって、定かではありません。

それにしても、何と不思議で嫋やかな男女関係、そして人間関係なのでしょう、奈良時代は…。

カテゴリ:ニュース・その他

コメント

コメントはログインすると見られるようになります。