運命に身を委ねて生きた高貴な女性。…名歌200選25、26 素浪人の『万葉集漫談』(230話)

『万葉集』巻2は昨日の磐姫皇后の歌で幕を開けるが、引き続き天智天皇に愛された過去をもちながら、藤原鎌足の正妻となって後世を過ごす、鏡王女(カガミノオオキミ)の数奇な運命をもの語る、不思議な4首の歌があります。

(230) 秋山の 樹(コ)の下隠(カク)り ゆく水の
            われこそ益(マ)さめ 御思(ミオモヒ)よりは
              巻2・92 鏡王女(カガミノオオキミ)

大意・ 秋の山の木の下を隠れて流れゆく水のように、私の貴方への思いは表には出さなくとも、貴方が私を想ってくださるよりはるかに何倍も大きいと存じます。