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よくあるご質問

6、ベラスケスの《ラス・メニーナス(女官たち)》

このあとKさんは「ではこれからスペイン画家の三大巨匠といわれるベラスケス、ゴヤ、エル・グレコの絵を見てまいりましょう」と言って、最初にエル・グレコの前へ。
 エル・グレコ最後の作品で、一人の男の集大成といわれる《羊飼いの礼拝》。
 慈愛に満ち溢れた眼差しでイエスの覆いを取り去る聖母、驚きの様を呈する聖ヨセフと、感動を表現する羊飼いらのそれぞれの視線に、この絵の主題である復活と永遠が表現されているという。画面左手前の羊飼いは、本人の自画像。
 右の絵は、大原美術館収蔵の《受胎告知》。この中期の作品が日本にある価値は大きい。
  ユネスコが世界の三大名画としたのは、アムステルダムにあるレンブラントの《夜警》、これから見るベラスケスの《ラス・メニーナス(女官たち)》、そして午後からその絵の前に立つトレドのサント・トメ教会にあるエル・グレコの《オルガス伯爵の埋葬》だそうで、その時にエル・グレコについて触れることにしようと思う。
 今月の末に、5年前のドイツツアーの方々との懇親会が鳥取の皆生温泉で開かれることになっていて、F夫妻とこれにあわせて岡山の牛窓ホテルリマーニと、倉敷国際ホテルに泊まることにして大原美術館に行く予定。新婚旅行のとき行ったので、ここにあるエル・グレコの《受胎告知》にも再会できることを楽しみにしている。

 私がプラド美術館で求めた『ガイドブック』の表紙に、この《ラス・メニーナス(女官たち)》が使われている。
 前述の世界の三大名画は門外不出となっているから、その地へ行かなければ観ることはできないが、ベラスケスのこの絵は、「絵画中の絵画」としてプラドでも別格扱いだ。
 K子さんは、「隣の特別室に、この美術館の至宝があります。一生のお願いですから、どうぞ私がいいというまでお顔を上げないでご自分の足元だけを見ながらお進みください。
 一生のお願いです、全く感動が違いますから。そのトリックの感動は一生に一度しか味わえません。そうでないと何の意味もありません。一生のお願いです」と、くどいほどこの言葉を使って、われわれを絵の前まで導いた。
 「では、どうぞご覧下さい」。
 マドリーの王宮の一室で二人の女官が満5歳になる王女マルガリータの両側に侍り、左の女官は水を捧げて王女のご機嫌を取り、画面右手の太った矮人(こびと)、そしてマスティフ犬を踏みつけているとても16歳には見えない矮人の道化役者。後方薄明りにぼやけて見えるのは女官長で傍らの男性とおしゃべり中。反対側には画家ベラスケス本人。
 奥のドアには逆光になって振り向いている配室長。更に鏡には国王夫妻が映っているが王と王妃は作品の外、つまり絵を見る者の位置にいることになる。数多くの登場人物をバランスよく構図の中に配置していて、描かれている人の名前も明らかだが煩わしいから省いた。
 近くで見ると画面のタッチも実に乱雑で、K子さんも「これくらいなら私にも描けます」というが、手の甲や洋服の光が当たっている部分などただベタッと白を重ねているだけだ。
 ところが一応の解説の後に、また一生のお願いですからとK子さんの指示で、遠くに退いてOKという所で再び振り返ってこの絵を見て、皆が一応に「あっ!」と叫んだ。
 これが線遠近法と空気遠近法というものかと、この技法を駆使して光を巧に繰ることによって、作品の向こう側にも続く奥深い空間を見る者の前に現出させているのだ。
 ピカソもびっくりしたのだというが、まさに3Dだ。近くで見るとべたべたの平面だったものが、一気に奥行きが生じて、洋服もシルクやサテン、ベルベットのように見える。
 とても画集では味わえない、やはり実際に見ないでは実感できないと改めて思った。
 「マルガリータちゃんのお父様はフェリペ4世です。はじめは向かいの絵の白馬のお妃と結婚しましたが早世されて、早く跡取りをというわけで再婚されますが、怖いですね。当時よくあったことですが、王様は実の妹の娘・姪と結婚するのです。 王様は44歳、姪は14歳です。犯罪ですね。そしてお二人の間に生まれたのがマルガリータちゃんです。
 国王はもう可愛く、可愛くて、お気に入りのベラスケスに何枚も肖像画を描かせて、ウィーンのハプスブルグ家にその成長ぶりを知らせています。というわけで、この《ラス・メニーナス(女官たち)》は、ベラスケスがマルガリータちゃんを描いている、という絵を描いている絵です」。

カテゴリ:ニュース・その他

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