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よくあるご質問

8、ゴヤの《カルロス4世の家族》

スペイン王家を確立した、アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ王イサベルの孫の、花王石鹸のような顎の大きなティツィアーノの描いた《カルロス5世騎馬像》を見ながら、ルーベンスの《三美神》へ。
 プラド美術館のルーベンスのコレクションは質・量とも世界一といわれている。画家としてのみならず外交官としても活躍したルーベンスの二度目のスペイン訪問は、英国との和平交渉が主務であった。マドリーではベラスケスに出会い彼に大きな影響を及ぼすとともに、フェリペ4世は最大のルーベンス愛好家となって、数多くの作品を蒐集した。
 ルーベンス46歳のとき愛する妻が死亡。その後、全く描く意欲を失い外交官としての仕事に打ち込む日々であったが、53歳のとき亡き夫人の姪、16歳になるエレーヌ・フールマンと再婚。以後、11年間に亘ってエレーヌを描きまくった。この《三美神》の左の金髪の女性がエレーヌで、ルーベンスは生涯この絵を手元に置いていた。
 ヘーシオドスの『神統記』によれば、愛の女神アフロディーテに仕える三美神は、輝きを意味するアグライア、喜びを意味するエウプロシュネ、そして花の盛りを意味するタレイアの三人で、彼女らはゼウスの情事から生まれている。
 近くで実物を見ると、つい触れてみたくなるようなふっくらとした肌、輝く色艶、薔薇の香り、水の音など5感を優しく刺戟するような、どの教科書にも載っている絵だ。

 いよいよK子さんは、「血液型Aのベラスケスから、私と同じB型のゴヤへ参ります。同じ匂いを感じてしまいます」と、ゴヤの《カルロス4世の家族》へと案内した。
 宮廷直々の注文で描かれた王室一家の肖像画。ゴヤの気合の入った肖像画は、モデルの性格がギュッと滲み出る凄さがある。この絵を見たナポレオンは「根性丸出しだ」と。
 ただ人のいいおやじ風のカルロス4世、それに引き換え、かかあ天下丸出しの王妃。
 国王は狩にうつつを抜かし、政務は青年宰相のマヌエル・ゴドイに任せきりで、そのゴドイも王妃マリア・ルイザが39歳のとき採り立てた当時19歳の愛人であった。
 この絵の49歳の王妃の両側に立つ娘マリア・イザベル王女も左手の末子フランシスコ・デ・パウラ皇子もゴドイとの子といわれており、知らぬは国王のみ。王妃は他にも何人か愛人があったようで20回妊娠して14人の子をなしているが、早世した子も多い。
 いかにも「この国を仕切っているのはあたしよ」と言わんばかりの王妃。どう見ても美しいとは言えない。いくらおべんちゃらの言えないB型であろうと、そのまま描いては、やっと手に入れた宮廷画家としての人生を棒に振ってしまうのではと考えなかったのだろうか。
 ところが王妃は日頃から首から下の肌を自慢していたそうで、ゴヤは太い腕をきっちり描いてバランスを取ったのかもしれない。権威を表現されて王妃はいたく満足気だったと。
 この絵には、既に故人となっていた右から4人目の王の弟の妻が描かれていたり、ひとり後ろ向きの女性は、まだ独身であった左から2人の皇太子フェルディナンドの妻となる女性で、まだ決まっていなかったからいずれ描き直そうという意図であった。そして、ベラスケスの《ラス・メニーナス》と同様、画家ゴヤが左手奥に描かれている。
 そしてこの後、プラド美術館の一番人気の《裸のマハ》《着衣のマハ》へ進んだ。
 「日本で、マヤと書かれているのがありますが、間違いです。文部省に言っておいてください。マハは普通名詞の伊達女という意味で、名前ではありません。
 モデルはゴヤと深い関係にあったアルバ公爵夫人と言われてもいましたが、子孫が今もスペイン広場の近くにいらっしゃいまして、84歳になられて爵位の数は世界一です。最近59歳の方と三度目の結婚をされてお元気です。お金があるとできるのですね」。
 ゴヤのこの絵については、以前の日記に書いたのでここでは省略。
http://smcb.jp/_ps01?post_id=2814604&oid=88829
 Kさんが、「だんな様方にお訊きしますけれど、いくら昇進させてくれるとはいえ何時までもおばあちゃんの愛人でいますか。嫌ですよね。かと言っていくら著名な画家とはいえ、自分の彼女の裸を描かせますか ?」。「この間のツアーの方は、なったことがないから判らないとか、妻がいるから答えられないと言っていましたけれど」。
 しかし、こうやってよく考えると、やはりモデルはゴヤ自身に訊くしかない謎だ。

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