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よくあるご質問

よく出来ている入門書2冊

やっと旅行中の写真をプリントした。570枚ものその時間と用紙とインク代を考えたら無駄なことだとは思いつつ、いつものようにやってしまった。もう十年もしたら、残された方が処分に困るのであろうただのゴミだとは思うが。
 きっと本も同じなのだろうな。
 木村泰司著『名画の言い分』ちくま文庫と、橋爪大三郎×大澤真幸・対談『ふしぎなキリスト教』講談社現代新書、を読了。この二冊、入門書としては出色の好著だと思う。
 まず、『名画の言い分』は、古代ギリシャ彫刻から印象派まで、106枚の作品を巻頭に示しながら西洋美術を理解するための基礎知識を実に分りやすくエスプリ豊かに解説する。
 最初に「西洋絵画は見るものではなく読むものだ」という持論を示している。とかく日本では、好きか嫌いか、感動するかしないか、という尺度で芸術作品を見る。つまり「感性で美術を見る」というのが広く膾炙されているが、感性で近代以前の西洋美術を見ることは不可能だと著者は言う。それは西欧文明自体が「人間の感性などあてにならない。理性的でなければ」というところから始まっているのだから。
 画家が自由に自分の好きな絵を描くようになったのは18世紀以降のことで、それ以前の作品は、ある一定のメッセージを伝えるもので、そこには明確な意図が内在していた。
 そのメッセージや意図を読み解くためには、その時代の歴史、政治、宗教観、思想、社会背景など膨大な量の知識が必要となるが、それらを包括して学問として体系化したのが西洋美術史。その時代のエッセンスを知れば、その時代になぜその絵が描かれたのかが分ってくる。その絵にどんなメッセージが託されているのかを読み解く愉しさも生まれる。
 ヨーロッパの美術館で、度々先生に連れられて絵の前で解説を受けている小学生の集団に出会った。子どもたちは床に腰を下ろして先生の話を聞いていた。
 一枚の絵を通してその描かれている時代の歴史も、その社会背景や思想も読み取れる実地の学習なのであろう。

 もう一冊の『ふしぎなキリスト教』は、私は旧約聖書・新約聖書を読んだことがあるとはいえ、信者でもなくキリスト教の宗教実感もなくよく解っていないというのが本当のところだ。
 ましてキリスト教の母体であるユダヤ教や、その後派生したイスラム教との反目などもすっきりしないところであった。
 例えば、イエス・キリストがユダヤ人であるにも関らず、そのキリスト教信者がユダヤ人を、なぜこの世から抹殺しようとするまでに気嫌うのか。この素朴な私の問いに、この本の中には答えを見出し得ないのであるが・・・。
 この本は、最も信頼できる比較宗教社会学者の橋爪大三郎氏に、同じく社会学者の大澤真幸氏が挑発的な質問者となって問いを発し、それに答える形式で話が展開する。
 その対談の条件として、基礎を何も知らない人に分ってもらえるものにするとともに、キリスト教や近代社会について既に多くの知識をもち、いろんなことを考えてきた人にとっても「それは本質的な問題だ」と思ってもらえるものにしたという。ある意味で最も素朴で本質的な質問が一番重要で、最初の質問であると同時に、最後まで残る一番しぶとい重要な謎であるというのだ。
 キリスト教の背景にあるユダヤ教との関係で、啓示宗教としての一神教の基本的な考え方(第一部)、キリスト教の独創的な側面である「イエス・キリスト」とは何であるかを考え(第二部)、最後にキリスト教がその後の歴史・文明にどのようなインパクトを残してきたか(第三部)、の三部構成で、実に刺激的で愉しい読み物となっている。
 例えば、歴史を振り返れば、中世くらいまでイスラム教の方が技術の面でも哲学や思想の面でも先んじていた。これが逆転したのは16世紀頃の大航海の時代であり、宗教改革の頃であった。宗教的な一貫性ということでいうとイスラム教が勝っていて、どう見ても不利なのはキリスト教の方。新約聖書の内部不一致や矛盾、復活やら、神の子やら、三位一体など、乗り越えなければならないハードルがたくさんある。そのキリスト教が優位になったのは、宗教改革、科学技術の発展、資本主義などがあるが、一番大事な点はキリスト教徒が、自由に法律を作れる点だと指摘する。
 もう一度、じっくり読みたい本だ。

 四月に『キリスト教をもっと知りたい』月本昭男立教大学教授監修、Gakkenを求めた。表紙がプラド美術館で観たウェイデンの『十字架降架』で、教会美術の名品でひもとくイエスの神話と聖人たちの伝説-と銘打たれたA4、650円という安さで美しい絵が満載されている。
 実はその頃、たまたま次男の大学の教科書『神の前に真実に キリスト教概論』を手にしていたのだが、途中までしか読んでいない。執筆スタンスの違いからなのだろうか。

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