連載:我が家の履歴から

第21回 我が家の履歴から21.父の交友関係の中には

父は、前にも触れたように、社交家ではなかった。と言っても、気難しい孤独な学者ではさらさらなかった。円満な温厚な人柄だった。もちろん研究者としての厳しい側面もあったけれども。

 父は法医学者だったから、その交友には、医学者・医師が多いのは当然だろう。父は大正5年に東京帝大医科大学を卒業している。後年は「大五医師会」の幹事役を勤めてもいた。父にとっては、法医学・血清学の恩師三田定則先生のことは生涯にわたって尊敬して止まなかった。「親鸞を科学者にしたような方」と称していた。その他、生理学の永井潜先生をはじめ、随分たくさんの恩師・先輩の先生方に可愛がっていた