「船に乗れ! 」 藤谷治 著

☆☆☆☆★

ベルリンに向かう飛行機の中で、藤谷治「船に乗れ! 第3部 合奏協奏曲」を読んでいたら、ブランデンブルグ協奏曲5番の合奏のシーンで涙が止まらなくなる。

実は、第2部 の中頃までは、音楽シーンの描写は秀逸だが、小説としては村上春樹風の味付けをした、凡庸な学園恋愛物かな、という評価に傾いていた。それは、明らかに間違っていた(読者を泣かせる事が必ずしも小説の高評価につながる訳ではないが)。第2部の中頃から、主人公を乗せた船(人生)に押し寄せる波はその振幅をどんどんと増大させる。その波にゆられ、振り落とされそうになりながら、必死にしがみつく、その