伊藤薫氏著「八甲田山消された真実」を読み終えて

だいぶ前のことだが、私は八甲田大岳に登り、酸ヶ湯温泉で汗を流したことがある。時期は7月北国の高山植物が咲き乱れ実に快適な登山だった。特にチシマギキョウの澄んだ「青」はいまでも瞼の奥に残っている。大岳の北東30㎞にある第5聯隊の遭難地は遥か彼方だった。尚、八甲田山という名の山はなく、八甲田大岳を主峰とする周辺の連山の総称である。

著者は青森生まれの元自衛官であり、青森の五連隊に所属していた。弘前には三十九連隊があり、対抗意識が強かった。著者は言う。旧軍の五聯隊と弘前三十一聯隊の強い対抗意識は継承されている、と。2012年退官後、五聯隊遭難の真実を求めて執