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よくあるご質問

ダム放流手順は適切だったのか?


愛媛県大洲市を流れる肱川の野村ダムの放流で洪水が発生、数名の方がなくなられた。
 ダムの管理者は 満杯になったから、ゲートを解放して放流した。ルール通りのことをしている。ほかに方法は無い。というような説明をしていました。
 その通りなのか? 国交省のダムや河川データを調べて、ほんとに洪水は必然だったのか検討して見ました。

 このダムの建設経緯は大洲市街の洪水を防ぐために作られたとされています。実際は、農業用水、飲料水にも使用される多目的ダム。それが、ダム直下の集落に大きな被害をもたらす大水害を発生させたと云うことである。ルールに従って運用したから問題ないでよいのでしょうか?


 このダムは ダムの本体が高さ60m 堰堤長が300m
 有効貯水量が12,700千m3、治水容量(洪水調節容量)3,500千m3
        他に 特定灌漑用水 10,200千m3 
            水道 1,700千m3
 ダム許容最高水位(洪水時最高水位) 170.2m(海抜高度)
 洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) 166.2m
 ダム最低水位(堆砂面)  148.0m
 計画放水流量 300m3/sec、(この放流量では、河川流量は多いものの、全く問題ない範囲)
計画最大放水量 1000m3/sec (この放水量までは、すぐ下流の川では洪水が発生しない、注意報、警報は必要?)
となっています。

 実際どのような運用がなされていたのでしょうか?
  台風7号が日本海を通過し、梅雨前線が活発化し、7月4日の時点では大雨が予想されていたと思われます。
  7月5日から洪水が発生した7日までを見て見ます。
データは 国土交通省 野村ダムのデータ、(ダム水位は海抜高度?)
下流河川水位はダム下流 2kmの荒瀬観測所 (氾濫点の少し下流)
  なお、現在1時間ごとのデータ値しか見ることが出来ず、計算には誤差があることはご承知おきください。

     ダム水位  流入水量 放流水量 下流河川水位
7/5日1時165.4m  13.8m3/s 26.35m3/s 1.83m
     この時点で、ダムの水位は許容最高水位より4.8mひくく、貯水容量は
約 2,280千m3あったと推定出来る。
6 日 0時 163.5m 53.5m3/s 65.0m3/s 2.55m
21時 162.7m 260.7m3/s 264.3m3/s 4.05m
ここまでは、放流量を流入量より10m3/s 程度増やして、ダム水位を下げ続けています。この間の水位低下は2.7mです、貯水容量アップは 2300千m3であり、この時点で、貯水容量は合計は約4587千m3、ダムの計画治水容量3,500千m3の30% 増しの貯水容量が確保されていました。
22 時 162.8m 319.2m3/s 295.7m3/s 4.07m
 22時になるとさらに流入量が増え、計画放水量の300m3/secをこえたため、放水量を300m3 に制限し、余分な流入量をダムに溜め込み始めました。
 流入量はさらに増え続けました。しかし、放出量は300m3/sec に留めたままでした。
7 日 5時 166.1m 716.9m3/s 296.9m3/s 4.4m
   6時 168.5 m 1074.2m3/s 330.8m3/s 5.95m
このときまでに溜め込んだ水の合計は 4419千mになります。確保した貯水容量のほぼ全てを使い切ったことになります。そこで少しずつ、放流量を増やし始めたようです。
 でも、この下流の河川容量(洪水にならない)は1000m3/sec であり、この間の貯水は ほんとは必要なかったのです。(300m3/sec に制限する必要はなかった)
 流入量はさらに増え 6時には1000m3/secを越えました。
実際には、6時20分頃、ダムは満杯になり、最高水位に到達しました。このため、ダムの安全を守るため、ゲートを解放し、水位をこのまま維持する操作をしました。このため、ダムの放流量は流入量と等しくなりました。  
一方 下流の河川水位データは6時の時点ですでに急上昇しています。ダム放流量データと河川水位データの変化の間には矛盾があります。
7時 170.4m 1593.8m3/s 1452.2m3/s 4.68m
放流量はさらに増え 7時には1452m3/sec になっています。実際はゲート開放直後の下流で氾濫が発生したようです。
 そのため、7時の時点では河川水位は逆に大きく低下しています。
その後流入量は9時まで1000m3/sec を越え、10時から以下に減少して行きます。

以上が、インターネット上に残されたデータから 私が読み取ったダムの操作状況と実際のダムや河川の状況です。
 概要を纏めると
・当時 洪水対応として、ダム水位は下げられていたが、ダム計画上の治水容量は確保されていなかった。
・ 大雨が予想されたので?さらに放水量を流入量より増やして、貯水容量を増やす操作を行った。そのため、流入水が急増を始める6日夜までに、治水容量を30%越える貯水可能な容量を確保した。
・6日 夜23時頃から、流入量が計画放水量(下流の河川に洪水等の影響が全くない最大流量)300m3/secに達したので、放水量をこの値に保ち、余分な流入量はダムに貯め込み始めた。 
・流入量は増え続け、放流量を制限していたため、翌朝6時ごろにはダムはほぼ満杯になった。
・ダムが満杯になった時刻6時20分にダムゲートの開度を大きくし、ダム水位をこれ以上高めない(一定に保つ)調整(流入量と放出量を同じになる)に入った。
・流入量はますます増え、放出量は下流河川が氾濫する限界の1000m3/secを越えたが、なす術は無く。ダム直下の河川から水が溢れ決壊し大洪水になった。

ということである。
ここで気がつく問題点。
(1) せっかく作った貯水容量を洪水の心配の無い流入量のために使い果たしてしまい、ほんとに洪水の発生が想定される流入量を貯めることが出来なかったと云うことである。
 写真2(朝日新聞記事に追記)の赤の部分が溜め込む必要がなかった水量
     緑の部分を溜込まねばならなかった。
  流入量が1000m3/sec になる7日午前6時頃までは、流入量をそのまま放流し続け、1000m3/secを越えた時点から、放出流量を1000m3/sに制限、残りを貯水し始めれば、今回の場合はダムを満杯にさせること無く、大雨をやり過ごすことが出来、当然、下流の河川の氾濫はなかったのである。
  また、貯水容量の確保が治水容量の30%増し以上にできていれば更なる大雨にも対応は可能であったと云うことになる。
(2) 貯水容量をもっと多く確保することは出来なかったのか?と云う疑問である。操作的には、放出量をもっと増やすことは簡単なはず。下流に影響を及ぼさない放出量 300m3/secにすれば、ダムは十数時間で空にできる。
(3) ダム放流量を増やすことを下流に伝達したのは、7日の未明であったとのこと、全日の夜遅くにはその予兆は明確にあって、ダムの操作を変更している。ダムに水を溜め込む操作を開始し流入量の上昇が続くことも認められていた。この時点で下流に警報をだせなかったのか?
(1),(3)は結果してみれば、降雨、河川流入量の予想が甘かったと云うことであろう。大雨特別警報が出ている時点で、通常の操作をしていたということか?
 ダム上流にはいくつかの雨量計が設置されていて、リアルタイムで雨量を観察していたはず。雨量の変化と河川水の変化は当然ある時間遅れをもって、連動しているはずである。なぜ、そのデータを活用して事後の対応計画ができなかったのか?
 また、下流の河川水位のデータもリアルタイムで把握出来ていたはず。なぜ、下流河川に余裕があることがわかりながら、放流量を増さなかったのか?
 また、最近のコンピュータによる解析技術は雨量の変化とダム流入量の変化を計算することは容易である。また放出流量と下流河川の水位の変化も計算可能である。
そのようなシステムは構築されていなかったのだろうか?
(2)の貯水容量確保に関しては、治水容量を若干ではあるが増やしたことは、正しい選択ではあるが、さらに増やすことも容易であったはず。
 なぜ増やさなかったのか? このダムが当初計画された理由の「大洲市街を洪水から守る」という 治水専用のダムであったなら、おそらくそう言う操作がなされたであろう。
しかし、実際にはダムは、灌漑用、水道用を含む多目的ダムとして建設された。利用水の容量は灌漑用が治水用の3倍と云う数字になっている。
 このため、ダムの操作には大きな矛盾を含むことになる。
操作の選択を容易にするための、重要度はつけられていたのだろうか?
  当然、1。治水、2。水道m、3。灌漑ではないのだろうか?


以上のような考察をおこなうと、「ルール通りに操作した。ダムが満杯になったので、ダムを守るためには放水はやむをえない。また、放水前には事前に下流に連絡、警報を発した」と云う説明に被害者の方々は納得できるのであろうか?


補足
 なお、ダム下流で洪水が発生した部分の川幅は約47m、川底からの堤防高さは約7m、危険水位として、1mを差し引くと、水位6mで水が流れるとします。川底勾配はわかりませんが、国土地理院の地図の断面図機能で岸上の道路の勾配を読み取ると、両岸共に 約0.0025 となります。これから、マニングの公式を使って流量を計算すると、水位6mで 1300から1500m3/sec と云う数字が出て来ます。
最大放流量1500m3/sec という数字はそれをちょっと越えた流量であったことになります。

追記 8月19日 
 愛媛県 肱川の氾濫について、ダム操作が適切であったかどうかについての解説記事が
日経Xtech に掲載されています。
データは野村ダムではなく、その下流の鹿川ダムに関するものですが、ほぼ同様だったのではないかと思われます。
 なお、建設省のダムの放水ルールには「中小洪水対応」と「大規模洪水対応」の2種類があるとのこと、今回適用されていたのは、前者、ダム建設時に採用されていたのは後者だったとのこと。
 解説では鹿野川ダムの例であるが、今回の大雨でも後者のルールなら、大規模洪水は大洲市市街では起っていなかった可能性が高いことが指摘されている。


「中小洪水対応」の操作規則、マニュアル通りの放流は適切だったか
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00372/073100037/?P=2
 

カテゴリ:ニュース・その他

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