オホーツクの青い空

 辻村深月の「青空と逃げる」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、最近はミステリー以外の分野の作品も多い。本書は、父親の巻き込まれた事故により逃亡を余儀なくされた母子の逃避行と家族の再生を描いた物語である。
 本条早苗はかつて、鶴来嵩が主宰する剣会という小さな劇団に所属する俳優だったが、同じ劇団に所属する拳と結婚した後は引退していた。本条家はその後生まれた息子の力と三人暮らしで、平穏に暮らしていたが、ある日突然、その暮らしが一転する。夫の拳が、準主役として抜擢されて舞台で共演する人気女優の遥山真輝と深夜のドライブ中に交通事故に遭ってしま