バスで行く橋の向こうに汽車渡る 

 大阪城市電の窓に照るから梅雨  村山故郷

 大雪の都電とどまる旧居前  水原秋櫻子 帰心

 大兵を送り来し貨車灼けてならぶ  長谷川素逝 砲車

 大木の下にとどまる夏の貨車  飯田龍太

 但馬仔牛撫でて惜しみて貨車送り  山口誓子

 単線待避の 雪片あそぶ 貨車の胴  伊丹三樹彦

 淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく  加藤秋邨

 炭窯の口機関車の口なるよ  山口誓子

 団扇貼る目をあげ急行いよ一号  清崎敏郎

 築港に向ふ市電の大夕焼  右城暮石 句集外 昭和二十八年

 竹煮草まだ動かねば貨車の露  飯田龍太

 朝寒の市電兵馬と別れ