万葉美人の匂い?

 おにぎりと卵焼きをリュックにつめて、私市(きさいち)の大阪市大植物園に行った。今年の三月のことである。
 理学部の研究施設ということで、地味かつ真面目で、まさしく演習林という感じなのだが、自然の地形が生かされた「森の散策」を存分に味わうことができた。好感度は抜群。来園者にへつらわないところが特にいい。
 きついアップダウンに少々辟易していた私は小さな丘の頂に馬酔木(あせび)の花が咲いているのを見つけた。思いがけないご褒美だった。
 高校一年の国語の教科書でこの植物の名を知った。
 堀辰雄の「浄瑠璃寺の春」を講義