チェンマイの最後の夜。
およそ50分歩いてナイトバザールの演奏場所に着いた。
8時であった。
私を見るなり、彼は畳んでいた譜面台を組み立て、更に楽譜を見せてくれた。
ツゴイネルワイゼンの猛烈な楽譜であった。指で追いながらハミングする。
譜面台に立てたのだが、しかし、彼は視力が弱っている上に、譜面台からは離れている。
真剣に見ていたが、見えなかったのであろうか?所々間違えた。
完全には弾けなかった。無理もない。難曲で知られている。完璧に弾くためには、余程練習しておかなければならないはず。
闘病の身では、無理というもの。
ヴァイオリンソロの曲集を私に