連載:シニア

「ジュウネン、勉強出来なかった」

「私、書きたい。自分の言葉で。」
その人が最初にそう言った時、ああ、中国語が分かったらと思った。

彼女は細長い箱を持っていた。会場の片付けが終わり、それぞれ荷物を持って移動する時だった。

二胡だという。お願いして弾いてもらった。バイオリンの弓に似たそれは沢山の白い毛で出来ている。
「馬の毛ですか?」

スーッと引いた。室内に響き渡った。そのたった一つの音に忽ち虜になった。

「何か曲を弾いて下さい」

まだ習っているだけだと固持する彼女に頼み込んだ。伸びやかで、艶があり、広がりがある。勝手にモンゴルの平原を想像した。



先日、朗読会に参加して自分