「体が重いよ」
コーチが私を追い越して行く時、そう言った。初めてだ。
市民の森の一周目は歩く事に決めている。途中で畑の向こうから仲間が二人歩いて来た。
「走るよ」
そう言って、コーチは私を先頭にする。
「今日の目標は「下を向かない」です」
「いやいや今日は下を見て。滑って転ばないように。」
雨で濡れた落ち葉は滑りやすい。
「顔は下を向かずに、目だけ地面を見るんですね。」
三周まで一緒だったが、「疲れたら歩かないで小股に走るんだよ」と言ってコーチは離れて行く。
汗がこめかみを流れる。私は大抵三周すると汗が出る。
下を向かない。お腹を突き出す