連載:金魚日記

「自粛生活の限界」

信じられなかった。いない。

水の中に手を入れ、隠れ家にしていた素焼きの鉢をどけてみた。ポンプの裏側も見た。水槽の周りも見た。

玄関を見た。シューズをどけた。サンダルもどけた。

もう一度水の中を見た。気持ち悪くなった。朝は確かにいたヤツが消えたのだ。

水槽にはヤツ一匹しかいないから、共食いはない。もう一匹いた仲間を喰ったのはヤツだ。

玄関の隣は私が寝ている和室だ。部屋の戸はいつも開けている。もしヤツが和室に隠れていたら、私が襲われてしまう。

水槽の中で消えたとしたら、得体の知れない何かがこの家にいることになる。その方面は考えまい。

大型の懐中