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よくあるご質問

アリばば 地獄

2017年4月24日

モロッコと言えばなんと言っても映画「カサブランカ」
でも、カサブランカと聞いてイングリッド・バーグマンと、ハンフリー・ボガードのかの有名な映画を真っ先に連想するのは、我々団塊の世代が最後かもしれない。

モロッコのカサブランカは「ローマの休日」と並ぶ、映画が有名にした国であり、町だが「ローマの休日」はローマの街をロケしているのに対し、「カサブランカ」はハリウッドのスタジオで作られていたのだろう、街中は記憶にある限りほとんど出てこなかったように思う。

だから映画を見てモロッコに憧れた訳ではなく、行きたかったのはサハラ砂漠だった。

子供の頃「月の砂漠」の童謡でかき立てられた好奇心というのは案外続くものだ。
しかし何やらロマンチックな想いのあった砂の国は、来てみると黄砂の中にいるようなもので、景色も空も砂で霞み、せっかくの緑の木々も砂埃で白っぽく、すぐにでもシャワーを浴びたくなるほどだった。
何でも「アラビアのロレンス」が撮影されたのもこの辺りだったとか。
そうか、私は今あの映画の中にいるのか。

そう思いながらバスから四輪駆動車に乗り換えて砂漠というより土漠の中を走って行くと、突然現れたホテル「オーベルジュ・カスバ・トウンブクトウ」はなかなかエキゾチックで、砂ぼこりの舞う中をやって来た甲斐があったと納得できる異国情緒たっぷりの造りのホテルだった。

まるでリゾートホテルで、砂漠は砂浜じゃない?
砂漠の先には海がありそうな、そんな愉快な錯覚を楽しめる。
ただ残念なことにホテルに到着したその日の夜に予定していた星空鑑賞は曇天のため何も見えなかった。


そして翌朝。
未明の5時半に日の出を観賞するためにホテルを出た。
まだ真っ暗で三日月は出ていたけれど星は数えるほど。
非常に風が強く寒い。

この日の天気予報も曇天。
多分、前夜の星空鑑賞同様、日の出も見られないだろう。
けれど夜明け前の月夜にラクダに乗れるのは嬉しい。
まさしくこれは「月の砂漠」の世界だもの。

ふたこぶラクダにはモンゴルで乗ったけれど、こちらのラクダはひとこぶラクダ。
この年齢になっても「初めての経験」というのがあるのが嬉しい。

ところがそれをロマンチックだなどと喜んでいたのはそこまでだった。
砂丘は見た目よりもなかなか勾配のある高い丘で、砂は雪以上に柔らかく、歩きづらいことおびただしいのに、砂丘の作る尾根まではラクダを降りて歩いて上らなければならない。

砂丘の尾根は意外と急な斜面で砂でなければ危険この上ない境界線の上を、より高みを目指して歩いている時だ。

私の左足が砂にズズズっと埋まり、バランスを取ろうとした右足も同じように足を取られて結果的に身体が前のめりに倒れ、そのまま5~6m滑り落ちてしまったのだ。

信じられなかった。
空を切る、という言葉があるが、砂漠の砂もまるでそれと同じ。
手をついてもイタズラに埋まるだけで這い上がることもできない。

右足のスニーカーは砂から足を抜こうとした時に脱げて、すでに明るくなっていたにもかかわらず、どこに埋もれたのか見上げてもわからない。
私は蟻地獄の中に落ちた蟻?
安部公房の「砂の女」?
もしかしたらこれが話に聞く砂地獄?

勿論ラクダ引きの青年がすぐに私を助けに滑り降りてくれた。
映画だったら、若かったら、恋に落ちるシチュエーションだわ!
うっとり。

どうやらこういう私の妄想癖は恐怖を忘れさせようとする本能らしい。

有難いことにはスニーカーも彼がすぐに見当をつけて掘り出してくれた。
さすがプロ!

日の出は案の定見られなかったが、私は身をもって柔らかすぎる砂は凶器になりうるという事を知った。
それはなかなか興味深い発見だったけど、恐ろしい経験だった。

けれど映画「アラビアのロレンス」に出てきたような人を飲み込むような砂地獄はないそうである。
ただ助けてくれる人がいない時に私のような目にあうと身動きの取れない状態になるので、夜は冷え込み、昼間は暑いので危険な事に変わりはないとか。

砂漠はやはりなかなかミステリアスで、魅力と魔力に溢れた場所だった。


①砂地獄が待っているとも知らずに笑顔の私
②砂塵にけぶったおぼろ月のような朝日。

カテゴリ:旅行・お出かけ

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