渋谷雅一 の 質草女房

★3.5 第12回(2020年)角川春樹小説賞受賞作。
30歳の柏木宗太郎は本所回向院裏の長屋に住む貧乏浪人。これといった職に就かず、日傭取の仕事でその日暮らしの生活をしていた。だが、新政府軍の江戸進攻で仕事もなくなった。浪人が幾代か続いた家からか幕府にも新政府にも関心はない。

時代は慶応4年の上野の彰義隊が敗れた3月後。頼みの綱の本所相生町の質屋・巴屋の主・松ノ助は店を畳み隠居するという。だが、店の始末に絡む3両の仕事を与えてくれた。

彰義隊士の篠田兵庫という者が10両の質草に妻女・けいを置いたのだという。だが返済期限は2月過ぎている。篠田は他の3