乙川優三郎 の むこうだんばら亭

★3.7 江戸の娼家を畳み、途中で拾った遊女上がりのたかを女将として、孝助は銚子の飯沼村で居酒屋「いなさ屋」を営む。裏の仕事は口入れ屋で、女たちに密かな稼ぎ口の世話をする。どのみち女衒を介して体を売ることになるなら、自ら体を売って急場を凌ぐ手伝いをしようと。人を殺してきた人間が仏像を彫るのに似ている。物語はグランドホテル方式の8つの連作短編で、いずれもこの孝助が絡んでいる。「突破ずれ」と言われる兆子の東端に流れ着いた女ちと、銚子沖の荒波に命をかける漁師の男たち。印象に残ったのは「旅の日射し」と「果ての海」。

「行き暮れて」越後から13の時に江戸に売られ