朧夜に淡い桜の色咽(むせ)ぶ 



 ネオンサイン街に減りたる朧かな  中根美保

 吉野山闇に沈めて朧の灯  稲畑汀子

 露天湯にひとり眺むる朧月  斉藤富久子

 陸橋が朧をまたぐ鍛治屋町  三宅やよい

 旅終えて深夜の帰宅朧月  小川花久

 朧夜の根菜のごと泣く嬰児  塩見恵介

 送り出て兄とバス待つ朧の夜  山田京子

 満月も人棲める灯も朧かな  和田敏子

 一人消え一人現る朧道  大島ウメ

 初蝶の触覚のびる朧月  中林明美

 又一つ原稿依頼受く朧  稲畑汀子

 朧夜に淡い桜の色咽(むせ)ぶ  アロマ

 対岸の花を朧にせし隅田  稲畑