岩井三四二 の 田中家の三十二万石

★3.4 近江国浅井郡三川村の百姓から筑後32万石の大大名になった田中久兵衛吉政の生涯。前半の泥臭い話が面白い。この作家の得意なところでもある。

物語は久兵衛の16歳から始まる。僅かの田を耕すも、ほとんどを年貢にとられてやっと一家が生きている状態に見切りをつけて武士になろうと決断する久兵衛。

徐々に頭角を現す久兵衛は、秀吉の小谷城攻めでその傘下に。以後は秀次時代の家老職、関ヶ原の東軍選択と窮地におかれる。はらはらどきどきの選択だったがその結果が好運に恵まれた。この時代の他の小説にはまず登場しない目立たない存在。32万石の陰には苦労の連続があった。