生けられし白玉椿まだ蕾



 潮騒のいつしか遠く島椿  森清堯

 椿みな雨にうたれて色深き  辻香秀

 切岸の鵜の吹かれをり藪椿  岡野里子

 岐れ路野地蔵黙し椿散る  水野範子

 乙女椿官庁街を彩りて  竹内悦子

 さりげなくつくばひに置き白椿  辻香秀

 金剛山の風の冷たき藪椿  根本ひろ子

 砂に落ち音の滲まぬ白椿  鳥居美智子

 紅椿胸に明りが灯るやう  大谷信子

 床の間に利久好みの白椿  中道愛子

 山椿天王山に降る霊気  谷岡尚美

 青空に己を描く椿かな  稲畑廣太郎

 山椿ぽとりと池に春動く  愼野あさ子

 片